「青森県警に「イクボス」なぜ多い WLB重視の取り組み」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2020年4月4日 9時00分)から。

事件や事故が起きれば不眠不休で勤務するイメージが根強い警察でも、近年はワーク・ライフ・バランス(WLB)の改善をめざす取り組みが進む。男性の育児休業取得率が東北6県のなかで突出して高い青森県警の取り組みなどを探った。
 青森県警では2016年度以降、県警本部の幹部職員や署長らが、職場のワーク・ライフ・バランスの向上に努め、自らも家庭を大切にすることを誓う「イクボス宣言」にサインをしている。
 「イクボス」とは、部下のワーク・ライフ・バランスを尊重し、自身も仕事と私生活を楽しむ上司のこと。青森県警では年に一度、外部から講師を招いて幹部職員らを対象に「イクボスセミナー」を開催し、受講者がセミナー後に「宣言」にサインする。

 県警は「イクボス宣言」を採り入れた2016年度から、子どもが生まれる予定の男性職員に、出産5カ月前までに育児参加計画書を提出させている。計画書を受け取った上司が、職員に休暇取得を勧めたり、業務の負担が減るよう調整したりすることで、職員が育児に参加しやすくする取り組みだ。
 配偶者が出産した県警の男性職員のうちで育児休業を取った割合は、16年度には0・8%だったが、18年度には108人中10人、9・3%まで上昇した。25年度までにこの数字を15%以上まで引き上げることが目標だという。
 青森県警の男性職員で初めて育児休業を取得したのは、警務部会計課の長尾慶治主査(40)だ。16年2月、長女の誕生に合わせて約2週間の休みをとった。
 育休は女性がとるもので、男性は休まず働くのが当たり前だという雰囲気が、かつての県警にはあったと長尾主査は言う。だが上司に勧められ、ともに警察職員として働く妻と相談して育児休業の取得を決めた。
 「仕事に穴をあけてしまうのではという不安があったが、家事と育児をこなす大変さがわかった。他の職員も続いてほしい」と長尾主査は言うが、「小規模な署に勤務していたら、育児休業は取得しなかったかもしれない。職場の仕組みづくりはこれからも必要になると思う」とも話した。
 県警警務課の芳賀延聡次長は「3K(きつい・汚い・危険)のイメージが強い警察の仕事だが、ワーク・ライフ・バランスの向上をさらに進めて、就職志願者増にもつなげていきたい」と話している。
 宮城県警は2017年度、職員のワーク・ライフ・バランス向上のため、県警本部と県内の全警察署に「サポートルーム」を設置した。
 絵本などが置かれている6畳ほどのスペースで、育児休暇や育児休業を取得中の職員が、子どもを連れて上司との打ち合わせや仕事の引き継ぎをするために使われている。子どもを連れて定期的に職場を訪れやすい環境を整えることで、育児休暇や育児休業を取得しやすくするねらいがあるという。
 県警警務課の志子田聡企画官は「職場に迷惑がかかるからと育休取得をためらう職員がいてはいけない。育休中も職場に来やすい環境をつくることで、育児休業取得率の向上と職員の不安解消に努めていきたい」と話す。(仲川明里)