「「コロナが米国の重大な弱さを露呈」 死者は世界最多に 新型コロナウイルス」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2020年4月12日 9時22分)から。

新型コロナウイルスに感染して亡くなった人が米国で12日未明(日本時間)1万8860人に達し、イタリアを抜いて世界最多となった。感染者数も50万人以上で世界最多となっている。
 米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センターの集計によると、死者数は米国が最多となり、イタリア、スペイン、フランスと欧州諸国が続く。
 ワシントン・ポストなどによると、米国では10日、一日の死者数が2千人を超えて過去最多となった。トランプ大統領は当初、12日の復活祭(イースター)までに経済活動を再開させたい意向を示していたが、実際にはイースター前が「最も厳しい週」(トランプ氏)となった。
 トランプ政権は1月末に中国からの入国をいち早く制限。水際対策は一定程度ウイルスの侵入を遅らせたように見えた。

 しかし、新型コロナウイルスは、無症状の感染者が自覚のないままウイルスを運び、広めるという珍しい特性があった。感染が拡大していた欧州からの渡航者など、隠れた感染者が各地に散らばり、集団感染を起こした。
 水際対策は破られ、感染者から接触のあった人を探し感染ルートを特定する「接触追跡」は、すぐに追いつかなくなった。感染が急増し始めた3月8日、ジェローム・アダムス医務総監は「当初は封じ込める態勢がとれていた。今は(被害を)軽減する段階に移った」と述べた。

 トランプ政権は、3月16日、10人以上の集会や外食の自粛、在宅勤務の奨励などのガイドラインを出した。検査も追いつかない中、皆が感染している前提で、集会の自粛や他人と一定の距離を取る「ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)」政策にかじを切った。
 しかし、連邦制で州や地方自治体の権限が強い米国では、現場の対策は地方任せだ。地域にあった政策を機動的に行える半面、対策の差が感染の拡大につながった側面がある。
 ワシントン州カリフォルニア州など感染者が早い時期に確認された西海岸の州は、独自に対策を取った。ワシントン州では2月末から人との距離を取ったり、大規模イベントの延期や在宅勤務などを求めたりした。カリフォルニア州も3月半ばには国内でいち早くシリコンバレーを含む6郡で外出禁止命令を出し、すぐに州全土に広げている。感染者数の増加は同様の規制に手間取ったニューヨーク州などより低く抑えられている。
 外出規制が遅れた南部の州では、老人ホームや葬式などで感染が広がったほか、一部地域で規制の対象外になっている教会などの宗教施設の集まりでも集団感染が起きた。

 ホワイトハウス新型コロナウイルス担当のデボラ・バークス調整官は「ワシントン州カリフォルニア州は感染例が増える前に対策を決めたが、それが大きな違いになっている。感染が見えてからでは遅すぎる」と話す。
 安全保障問題に強いランド研究所のグループは米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに発表した論文で「新型コロナは、連邦主義の中で保健行政が分断されているという米国の重大な弱さを露呈した」と指摘した。
 一方、ワシントン大の感染予測モデルによると、米国の死者数は11日にピークを迎えるとされる。ニューヨーク州ニュージャージー州では、1日あたりの感染者数が横ばいか、下がり始めている。
 トランプ政権は、死者数が10万~24万人に達するとの見通しを示していたが、トランプ氏は10日の会見で、接触を避けるソーシャル・ディスタンシングの徹底などが一定の成果を上げているとして「死亡者数は10万人を下回るだろう」との見通しを示した。トランプ氏はこの日、外出制限などを早期に緩和させたい意向を改めて示したが、具体的な時期には言及しなかった。(ワシントン=香取啓介、大島隆)