「10万円、早期に配れなければ「政権どうなる」」

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以下、朝日新聞デジタル版(2020/4/21 17:45)から。

 新型コロナウイルスへの緊急経済対策をめぐり、10万円の一律給付措置を盛り込んだ補正予算案が20日閣議決定された。安倍晋三首相は同日夕の自民党役員会で、閣僚は10万円を受け取らない方針を表明した。野党は政府の軌道修正を一定程度評価し、追加対策を提案、要求する構えだ。(西村圭史、小林豪、山下龍一)

首相、10万円給付「一日も早く国民に届ける」
 首相は20日夕、国会内で開かれた党役員会で、10万円給付について「重要なことは一日も早く国民の手元に届けることだ」と、補正予算案の早期成立に協力を求めた。

 出席者によると、首相はその場で閣僚は10万円を受け取らない方針を説明。自民党国会議員も足並みをそろえる方向で調整する。二階俊博幹事長は役員会後の記者会見で「できるだけ皆さんの共感が得られるような形で処理したい。これから幹部の間で相談して結論を得たい」と述べた。

与党内にくすぶる不満
 補正予算案を了承するための党内手続きでは、政府への注文などが相次いだ。

 政調審議会では、かつてのリーマン・ショック時の定額給付金が準備に数カ月かかった反省を踏まえ、「今回、そんなに時間をかけることは許されない」などと早期給付を求める声が続出した。政調幹部は「5月中に10万円を配り始められなければ、政権はどうなることか」と危機感をにじませた。

 党の最終関門である総務会でも、申請手続きなどをめぐる意見や疑問が出た。鈴木俊一総務会長は記者会見で「閣議でも決定されたものがまた変わったということで、本当に異例中の異例だ」と苦言を呈した。

 政権中枢の対応に対する不満もくすぶる。船田元衆院議員は20日夕に配信した自身のメルマガで、現金給付案の見直しや、世論から批判も上がる「マスク2枚」配布などについて「市民感覚から離れてしまった、あるいは市民生活の生の情報が集まりにくくなった、官邸の拙速な考えや判断ミスによるものだろうか」と疑問を突きつけた。

野党、政策判断の変更、国会で説明要求
 手厚い現金給付を求めてきた野党は、政府が補正予算案に盛り込んだ10万円の一律給付自体には、前向きな評価をしている。

 立憲民主党福山哲郎幹事長は20日、記者団に「野党もずっと主張してきたこともあり、評価をしたい」。共産党小池晃書記局長も記者会見で「閣議決定したものを世論の力でひっくり返したことは画期的だ」と、政権への「異議申し立て」が効果を発揮したとの見方を示す。

 一方、補正予算案の見直しで喫緊の課題である対策が遅れたことは批判し、政策判断の経緯などについて国会で説明を求める。

 福山氏は予算案の提出の遅れを念頭に「医療崩壊のスピード、国民の生活が非常に厳しくなっているスピードには到底追いつけない」と強調。国民民主党泉健太政調会長は「官邸主導が裏目になっている」と語った。

立憲・枝野氏、1世帯30万円給付も検討すべき
 また、野党は現在の対策の不足を指摘し、国会審議などを通じて予算案のさらなる見直しを要求する構えだ。

 立憲の枝野幸男代表は20日の党会合で、政府が見直しを迫られた減収世帯への30万円給付について「これを全部切ってしまうというようなことがあっていいのか」と主張。10万円給付とともに検討すべきだとの考えを示した。

 共産の小池氏は「自粛(要請)と補償はセットだと言ってきた。休業補償という考え方が全くないというところが最大の問題」と話した。PCR検査拡充などとともに休業補償に踏み切るよう、他の野党とともに政府に迫る考えだ。(西村圭史、小林豪、山下龍一)