「中小企業「このままでは6カ月が限度」 もっと対応早く 新型コロナウイルス」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2020年4月27日 11時00分)から。

新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が停止するなか、中小企業は事業を続けることが難しくなり、非正規を中心に仕事を失う働き手は少なくない。政府は一律1人10万円の現金支給を決めたが、支援のスピード感への批判は強い。生活に困っている人々を救うためにいま、何が必要なのか。ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストに聞いた。
 ――現金給付や休業補償などの支援策では、海外と日本で手厚さやスピード感に差を感じます。
 「海外では非常事態宣言により期間限定で民主主義を放棄し、個人の権利を奪っている。その一方で、きちんと補償はする、ということがはっきりしている。日本はコロナ問題への危機感を、認識としても法的にも持てていない。ウイルスは予算の大きさや対策の中身とは一切関係なく、だれも制御できない」
 「生活保障として、まず1~2週間暮らせるお金を一刻も早く家計に届けるべきだったが、環境激変から3カ月近く、だれにいくら渡すかという議論が続き、現時点ではまだ0円だ。現金給付はスピード感が最優先だ。まず一律で渡し、後から高所得者に課税するといった対応しかない」
 ――中小企業からは悲痛な声が上がっています。
 「売り上げが8~9割減るという事態が相次いでいる。このままでは、せいぜい6カ月が体力の限度ではないか。通常の経済危機なら、頑張って安いものを売れば需要は喚起される。しかし、いまは自粛で民間は動けないから、公的支援に頼らざるを得ない」
 「企業の固定費で大きいのは人件費と家賃だ。人件費は雇用調整助成金を使った支援制度があるが、申請からお金の振り込みまで2カ月ほどもかかった。平時は充実しているようにみえた中小企業の資金繰り制度が、まったく機能していない。このままでは家賃も払えず、倒産が増える。不動産の借り手と貸し手、金融機関の三者を対象に危機モードの対策を先回りしてやるべきだ」
 ――緊急事態宣言は5月6日以降も延長されるとの見方も出ています。
 「政府は現金給付を続け、自治体への1兆円の臨時交付金も早く渡し、それをさらに増額して継続的な支援を打ち出すべきだ。支援を求める人と距離の近い自治体のほうが、より必要な対応を取れる。金融機関の危機から始まったリーマン・ショックのような『不況型』の対策では間に合わない。『短期決戦型』の危機対応のほうが、財政負担は結果として少なくて済むはずだ」
 ――収束後も視野に考えておくべきことは。
 「これまで進まなかったオンライン診療だけでなく、テレワーク(在宅勤務)も当たり前になり、効率性はすごく上がる。人々の価値観は変わるだろう。介護などの社会保障も含めた政策の効率をどう高めるのか、考えておく準備は必要だ」(聞き手=編集委員・伊藤裕香子)