「水俣病、公式確認から64年 遺族「何も終わってない」」

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  以下、朝日新聞デジタル版(2020年5月1日 21時05分

 

水俣病は1日、公式確認から64年を迎えた。熊本県水俣市で患者団体「水俣病互助会」(上村好男会長)による慰霊祭が営まれ、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため患者遺族ら関係者のみが集い、公害の犠牲となった人たちに祈りを捧げた。例年、環境相らが出席して水俣湾埋め立て地で営まれる水俣病犠牲者慰霊式は感染拡大防止のため延期された。
 水銀汚染で失われたすべての命をまつる「乙女塚」での慰霊祭は今年で40回目。13人がマスクをし、座席の間隔を広くあけて参列した。読経の中、一人ずつ焼香し、じっと手を合わせた。
 母の坂本フジエさんを昨年10月に亡くした胎児性水俣病患者の坂本しのぶさん(63)は慰霊祭後の取材に「水俣病は何も終わっていない。私たちが何十年も苦しんできたことを考えてほしい」と語った。
 水俣病は1956(昭和31)年5月1日、水俣保健所に患者の多発が届けられ、公式確認された。認定患者2283人のうち8割超の1961人(4月22日現在)が亡くなった。患者だけでなく、水俣病被害者救済法や訴訟などで約7万人が被害を認められている。患者の高齢化が進む一方、今も1507人が熊本、鹿児島両県に患者認定を求めているほか、損害賠償を求める訴訟も続く。
 しのぶさんと同世代で、胎児・小児期にメチル水銀の影響を受け水俣病になったとして、国などに損害賠償を求めて訴訟を続ける水俣病被害者互助会長の佐藤英樹さん(65)は慰霊祭後の取材で、国の新型コロナウイルスへの対応に言及し、こう述べた。「水俣病では初動を誤り、きちんと被害を調査しなかった。その教訓がコロナ対策に生かされていない。経済は二の次で、人の命が一番大事だ」(奥正光)