「「歴史的事態」の検証、問われる政権姿勢 専門家会議の議事録残さず 菅氏「政策決定ない」」

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以下、朝日新聞デジタル版(2020/5/30 5:00)から。

歴史的緊急事態における公文書管理
 新型コロナウイルス感染症への対応を検討する政府の専門家会議の議事録が残されていないことに、批判が集まっている。政府対応を事後的に検証することができなくなる可能性があるためだ。改めて安倍政権の公文書管理への姿勢が問われる事態となっている。

 医薬業界専門紙「リスファクス」は28日、同紙の情報開示請求に対し、内閣官房が議事録は「不存在」として不開示決定したと報じた。

 菅義偉官房長官は29日の閣議後会見で、専門家会議は、公文書管理のガイドラインが定める「政策の決定または了解を行わない会議等」に該当すると主張。発言者が特定されない「議事要旨」を作成、公表していることから「ガイドラインに沿って適切に記録を作成している」とし、議事録は残さなくても問題はないとの認識を示した。

 政府は3月、新型コロナの感染拡大を同ガイドラインに基づく「歴史的緊急事態」に初めて指定して、適切に文書を作成し、保存、管理する方針を決めた。

 だが、どこまで記録を残すかなど、政府判断の余地が大きい点が当初から問題視された。「政策の決定または了解」が行われた場合は発言内容を記載した議事録などの作成が義務づけられるが、そうでない場合は活動の進捗(しんちょく)状況や確認事項を記載した文書などに限定されたためだ。

 しかし、専門家会議の尾身茂副座長は29日の会見で、同日の会議でメンバーから、発言者の記載がある議事録の作成を求める声があったことを紹介。加藤勝信厚生労働相も3月2日の参院予算委員会で、専門家会議について「1~3回目は議事概要になるが、4回目以降は速記を入れて一言一句残す」と答弁していた。

 歴史的緊急事態は、2011年の東日本大震災の際、民主党政権が意思決定過程を記録していなかったことを受け、12年に同ガイドラインに盛り込まれたもの。当時野党だった自民党公明党が、民主党政権の対応を追及した背景があった。当時、官房長官として震災対応に当たった立憲民主党枝野幸男代表は、29日の党会合で「こんな大事な専門家会議の記録が残っていないというのはとんでもない話だ」と批判した。

 一方、国の行政運営に関する指針では、専門家を構成員とする会合を「懇談会等」と定めている。NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、同ガイドラインでは、「懇談会等」は歴史的緊急事態かどうかに関わらず議事録作成が求められていると指摘。その上で「政府の説明では、歴史的緊急事態に当たることで、通常は義務付けられている記録の作成が免除されることになってしまう」と話した。(菅原普、坂本純也)