「専門家会議の議事録なぜ作らない? メンバーからも異論」

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以下、朝日新聞デジタル版(2020/5/29 22:00)から。

 新型コロナウイルス感染症への対応を検討する政府の専門家会議の議事録が残されていないことに、批判が集まっている。政府対応を事後的に検証することができなくなる可能性があるためだ。改めて安倍政権の公文書管理への姿勢が問われる事態となっている。

 医薬業界専門紙「リスファクス」は28日、同紙の情報開示請求に対し、内閣官房が議事録は「不存在」として不開示決定したと報じた。

 菅義偉官房長官は29日の閣議後会見で、専門家会議は、公文書管理のガイドラインが定める「政策の決定または了解を行わない会議等」に該当すると主張。発言者が特定されない「議事要旨」を作成、公表していることから「ガイドラインに沿って適切に記録を作成している」とし、議事録は残さなくても問題はないとの認識を示した。発言者を明記しないことについては「第1回の会議の際に構成員に説明をし、了解をいただいた」と話した。

 公文書管理を担当する北村誠吾地方創生相も同日の閣議後会見で、専門家会議の議事録を作成しない理由について「構成員の専門家に自由かつ率直にご議論をいただくため」と説明した。

 政府は3月、新型コロナの感染拡大を同ガイドラインに基づく「歴史的緊急事態」に初めて指定。「国家、社会として記録を共有すべき歴史的に重要なもの」(北村氏)として、適切に文書を作成し、保存、管理する方針を決めた。

 だが、どこまで記録を残すかなど、政府判断の余地が大きい点が当初から問題視された。「政策の決定または了解」が行われた場合は発言内容を記載した議事録などの作成が義務づけられるが、そうでない場合は活動の進捗(しんちょく)状況や確認事項を記載した文書などに限定されたためだ。

 しかし、専門家会議の尾身茂副座長は29日の会見で、同日の会議でメンバーから「国の方としてもちゃんと検討してください」と、発言者の記載がある議事録の作成を求める声があったことを紹介。加藤勝信厚生労働相も3月2日の参院予算委員会で、専門家会議について「1~3回目は議事概要になるが、4回目以降は速記を入れて、一言一句残す。専門家の了解の範囲で、当面は公表させて頂く」と答弁していた。

 そもそも歴史的緊急事態は、2011年の東日本大震災の際、当時の民主党政権が意思決定過程を記録していなかったことを受けて、12年に同ガイドラインに盛り込まれたものだ。当時野党だった自民党公明党が、民主党政権の対応を厳しく追及した背景があった。

 それだけに旧民主勢力を中心とした野党は、今回の事態に強く反発。当時、官房長官として震災対応に当たった立憲民主党枝野幸男代表は、29日の党会合で「こんな大事な専門家会議の記録が残っていないというのはとんでもない話だ。9年前の指摘をそっくりお返ししたい」と批判した。

 また野党は、森友・加計学園問題桜を見る会などで公文書のずさんな管理が問われてきた安倍政権の「体質」を懸念し、今年3月の歴史的緊急事態の指定時に記録を残すよう強く求めてきた。枝野氏は、政府の会議は録音があり、同席した官僚らのメモがあることから、「議事録は作れる」とも指摘した。

 一方、国の行政運営に関する指針では、専門家を構成員とする会合を「懇談会等」と定めている。NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、同ガイドラインでは、「懇談会等」は歴史的緊急事態かどうかに関わらず議事録作成が求められていると指摘。その上で「政府の説明では、歴史的緊急事態に当たることで、通常は義務付けられている記録の作成が免除されることになってしまう」と話した。(菅原普、坂本純也)