「一部デモで放火、警察と衝突 トランプ氏は挑発的言動」

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以下、朝日新聞デジタル版(2020/6/1 5:00)から。

 米国各地で、黒人男性の死亡をめぐる抗議デモが激しさを増している。警察と衝突し、放火や略奪も起きるなか、当初はデモに同情的な姿勢を見せていた当局は次第に取り締まりを強化している。トランプ大統領も扇動的な言動を繰り返しつつ、連邦政府による介入も示唆した。

 白人警官が、黒人のジョージ・フロイドさんの首を圧迫して死なせるという事件が起きたミネソタ州ミネアポリスでは5月27日夜にデモ隊の一部が暴徒化し、放火や略奪を繰り広げた。同州は州兵700人を投入するなど収拾を図ったが、地元メディアによると、30日までに同市や周辺で>>
郵便局や銀行、商業施設など246軒が略奪などの被害を受けたという。警官らに向けた発砲もあった。

 こうした事態に、デモが当初の目的から逸脱した、という見方が出ている。ワルツ州知事は30日朝の会見で、「ミネアポリスの事態はもはやフロイドさんの殺害に関するものではない。市民社会に対する攻撃だ」と語り、略奪行為などを非難した。同州のハリントン公安局長は、一部の過激なグループが放火や略奪などを働いているとの見方を示し、「火炎瓶を投げ始めたら、表現の自由の問題ではなくなる」などと話した。

 米国では2014年ごろから、警察から黒人への過剰な暴力が問題となってきた。「Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)」という運動に発展し、米国各地での大きなデモにつながった。今回のデモも、この運動の延長線上にある。

 30日、首都ワシントンではホワイトハウス前に約1千人が集まり、「撃たないで!」などと平和的なデモ行進をした。参加者の一人、黒人女性の医師アイシャ・コルベットさん(49)は「警察は我々を守るのが役割だが、ほとんどの黒人は警察を恐れている。この国の司法を徹底的に検証し直す必要がある」と語った。しかし、夜には様相が変わり、付近の建物の窓ガラスが割られ、工事現場の足場が燃やされた。

 一方、米国内では新型コロナウイルスの死者が10万人を超え、特に黒人らマイノリティーは死亡率の高さが指摘されている。さらに、3月以降は感染拡大を防止するため、各地で自宅待機などの措置が取られ、3600万人以上が失業したとされる。先行きの不透明さが増し、不安や不満の蓄積がデモで噴出した可能性もある。

 そんななか、トランプ氏は挑発的なメッセージを出し続けている。ホワイトハウス前では29日夜もデモがあり、参加者が大統領警護隊と小競り合いになった。トランプ氏はツイッターで警護隊の対応を褒め、デモ隊に対しては「(敷地内に入れば)凶暴な犬と恐ろしい武器」が待ち構えていたと主張した。

 トランプ氏は29日未明も、ミネアポリスのデモ隊を「ちんぴらども」と形容し、「略奪が始まれば、銃撃が始まる」とツイート。発砲を示唆したと受け止められ、ツイッター社は「暴力賛美を禁じた規約に反する」と警告をつけた。ただ、トランプ氏は30日も「(地元政府は)もっと強硬に対応するべきだ」と繰り返し、「要請があれば、我々は迅速に軍隊を派遣することができる」と強調した。(ワシントン=園田耕司、ニューヨーク=鵜飼啓)