「「相手領域内でも阻止能力を」 敵基地攻撃で自民部会」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2020年7月31日 23時33分)から。

自民党の国防部会と安全保障調査会は31日、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備断念を受け、政府に対して「敵基地攻撃能力」の保有を求める提言案を了承した。来週中にも党内手続きを経て決定し、安倍晋三首相に提出する。
 政府は国家安全保障会議NSC)で、新たなミサイル防衛体制などについて議論している。年末にも改定する方針の国家安全保障戦略などで敵基地攻撃能力の保有に踏み切れば、日本の安全保障政策の転換点となる。首相官邸は前向きだが与党・公明党は慎重で、首相の残り任期が来年9月までとなり、内閣支持率が低迷するなか、導入を決められるかは不透明だ。
 自民党の提言案は、北朝鮮の脅威に加え、尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返す中国を念頭に「グレーゾーンの事態が長期継続し、重大な事態へと急速に発展するリスクをはらんでいる」と強調。従来の弾道ミサイル防衛にとどまらず、中国やロシア、北朝鮮の新たなミサイル技術に対応する必要性を指摘した。その上で「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力」との表現で敵基地攻撃能力の保有を求めた。
 敵基地攻撃能力の検討では、攻撃を防ぐのに他に手段がない場合に限り、ミサイル基地をたたくことは法理的には自衛の範囲内との政府見解を踏まえると言及。防衛力の整備は「攻撃的兵器を保有しないなど、自衛のために必要最小限度のものに限る」との従来方針も維持し、早急に結論を出すよう政府に要請した。
 自民党はこれまでも敵基地攻撃能力の保有を繰り返し提言している。政府は日本が専守防衛の「盾」に徹し、打撃力の「矛」は米軍に委ねるとの役割分担のもと、保有を否定してきた。
 首相は6月の記者会見で「抑止力のあり方について新しい議論をしたい」とし、敵基地攻撃能力についても議論する方針を突如表明した。自民党は同月末に検討チームを設置し、1カ月で提言案をまとめた。政府は9月までNSCで議論を行い、世論の動向も見極めつつ、年末までに新たな安保戦略を決める方針だ。(北見英城、佐藤達弥)
自民党提言案の骨子
・イージス・アショアの代替機能を早急に示すべきだ。その際、米国の統合防空ミサイル防衛(IAMD)との連携を確保
・日米の基本的な役割分担は維持しつつ、同盟全体の抑止力・対処力を向上
・相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力を含め、抑止力を向上させる新たな取り組みが必要。従来の政府の立場は踏まえる
・宇宙、サイバー、電磁波領域や、政府としての情報機能の強化も検討