「三つ星シェフの憤り「政府は無計画。飲食店を狙い撃ち」」

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以下、朝日新聞デジタル版(2021/1/19 7:30)から。

 政府は新型コロナウイルスによる緊急事態宣言に伴い、飲食店に午後8時までの時短営業を求め、従わない場合は店名を公表したり過料を科したりする法改正を検討している。宣言の対象になった大阪の三つ星レストラン「HAJIME」(大阪市西区)の米田肇シェフ(48)は、「無計画な政府の政策で飲食店が消えてしまう」と話す。

 「この9カ月間、政府は何をしていたのかと怒りを通り越してあきれている」。JR大阪駅から1・5キロほど離れたオフィス街。大阪市西区江戸堀1丁目の一等地にあるHAJIMEで、米田さんは感情を抑えながら強い口調で言った。

 大学で電子工学を学び、電子部品メーカーから飲食業界に飛び込んだ異色のシェフ。フランスで修業後、2008年にHAJIMEを開き、オープン1年5カ月でミシュランの三つ星を獲得した。

 営業は夜だけ。基本は3万~4万円程度のコースのみだ。料理には、0・1度の違い、塩一粒にもこだわる。12席前後(コロナ前は18席)と限られた席に国内外から予約が集まる。

 「感染拡大防止にはできる限り協力したい」と話す米田さんだが、「エビデンス(証拠)が不十分なまま飲食店を狙い撃ちにし、罰則で抑え込もうとするのは間違いだ」という思いがある。政府は感染経路不明者の多くが飲食店での感染とするが、根拠となる具体的なデータは示していないと思うからだ。

 「あいまいな理由でとりあえず持っていきやすいところに責任を押し付けているのではないか」。そんな疑念の裏には、飲食業界の事情がある。「個人店とチェーンは別。和食、フレンチ、中華などの種類でもすみ分けされ、経営者同士の横のつながりが弱い。だから、『族議員』もいない」

 それを痛感したのは昨春だった。政府は飲食店に営業自粛を求めたが、補償は用意されていなかった。「飲食業界の危機だ」と米田さんはネットなどで呼びかけ、補償の制度を訴える署名を始めた。15万人を超える署名が集まり、3月、それを携えて東京で政府幹部らに直談判した。「飲食業界はそんなに大変なのか」と驚く政治家もいた。危機感が伝わっていなかった。

 (後略)

(染田屋竜太)