「投票規制、「黒人狙い」非難 米ジョージア、不在者投票の短縮など 大リーグ機構も反対」

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以下、朝日新聞デジタル版(2021/4/4 5:00)から。

 米南部ジョージア州共和党の主導によって成立した選挙関連法が、人種差別的だとして非難を受けている。民主党の支持層である黒人の投票を制限する意図が透けて見えるもので、複数の人権団体が提訴。大企業も相次いで反対を表明する事態になっている。

 問題の法律は先月25日に成立した。不在者投票の申請期間を短縮する▽不在者投票時の身元確認の徹底▽郵便投票用紙の投函(とうかん)箱を減らす▽列に並ぶ有権者への飲食物配布を禁止する――などを定めた。

 同州は州議会上下両院でともに共和党が多数派を占め、ケンプ知事も共和党出身だ。だが、昨年11月の大統領選では、バイデン氏が民主党候補として28年ぶりに勝利した。1月の連邦議会上院選でも民主党候補が2議席ともに獲得した。

 現状に危機感を持つ共和党は、特に黒人が困るような規制を設けることで、党として優位に選挙を進めたい思惑がある。同州は黒人が3割超と全米でも多く、黒人の記録的な投票率民主党の連勝の一因になったとされる。

 黒人は不在者投票者の割合が高く、身元確認に使われる運転免許証などの身分証を持つ割合は経済的な理由から低い。また、長時間列に並ぶ必要があるのは、黒人の多く住む州都アトランタなど都市部だ。

 そのため、法の成立後から批判が噴出した。バイデン大統領は26日、1964年に公民権法ができるまで南部の各州にあり、人種差別を助長した法律になぞらえて「21世紀のジム・クロウ法だ」と強く非難した。

 人権団体からは廃止を求めて提訴が相次ぐ。有力団体「米自由人権協会(ACLU)」は30日、提訴に際して「露骨な人種差別に駆り立てられた法であり、最悪の政治を象徴している」と声明を出した。反対の声は、市民の圧力を受けた企業にも広がる。

 スポーツ界も黙っていなかった。米大リーグ機構(MLB)は2日、7月のオールスターゲームとドラフトの開催地を同州のアトランタから移すと発表。黒人選手らで作る有志団体は「法律は黒人コミュニティーの権利を不平等に奪うだけでなく、他の州にも同様の法を通す道を開くものだ」と訴えた。今後も各界で、法律に反対する動きが広がるとみられる。(ニューヨーク=藤原学思)