以下、朝日新聞デジタル版(2021/4/20 14:00)から。
政府のワクチン確保の見込み
新型コロナウイルスのワクチンについて、菅義偉首相が米ファイザーとの間で追加供給を受けることで合意した。背景には、国内で承認審査中の英アストラゼネカのワクチンを使える時期が不透明になってきたことがある。だが、接種時期などは依然、はっきりしないままだ。「9月までに供給されるメドが立った」。首相は、訪米中に行った米製薬大手ファイザーのブーラ最高経営責任者(CEO)との電話協議を記者団に問われ、そう強調した。
海外に比べ接種が遅れる中、アストラゼネカと米モデルナのワクチンは順調に行けば、5月中の承認も期待されていた。だが、アストラゼネカのワクチンに接種後の血栓症が報告され、状況が変わった。
承認審査に遅れが出る可能性は否定できず、厚生労働省のある幹部は「審査しなければならない項目は増えるだろう」。血栓症に関する追加データの提出を同社に求めているという。
ファイザーのワクチンで報告される重いアレルギー反応「アナフィラキシー」は、接種後30分以内に出ることが多く、会場内で症状を確認しやすい。一方、血栓症はすぐに分からず、会場を離れた後だと、対応は難しい。別の幹部は「接種後のフォロー態勢も改めて検討する必要が生じるかもしれない」と指摘する。
「接種するワクチンを選びたい」という要望が国民の間で強まる可能性もある。複数の政府関係者によると、首相の言う「メド」には、ファイザーに加え、アストラゼネカとモデルナのワクチンも想定されているという。ただ、今回の追加供給については、「円滑に現場での接種が進むように、いまあるファイザーのワクチン1本になったとしてもいけるように、ということだろう」という見方が厚労省内にはある。
一方、追加供給の量について、政府は同社からの了解を得ていないことを理由に、明らかにしていない。首相が話す「供給」と、実際に国民が接種できるスケジュールとの関係も、はっきりしない。全体的な接種スケジュールの見通しは示されていないからだ。
自民党の下村博文政調会長は19日、接種にあたる医療関係者の人手不足を挙げ、「65歳以上の方に限定しても、自治体によっては来年までかかるのでは」と指摘。「このペースでいくと、すべての国民にワクチン接種できるのは来年春までかかるかもしれない」と述べた。(市野塊、坂本純也)
(後略)
(市野塊、坂本純也 野口憲太)