「日本芸術院改革は「遅きに失する」 山田洋次監督に聞く」

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以下、朝日新聞デジタル版(2021/5/14 10:00)から。

 優れた功績のある芸術家を顕彰する「日本芸術院」の会員選考を見直す改革案がまとまりました。映画「男はつらいよ」シリーズなどで知られる山田洋次監督(89)は、映画監督として現在唯一の会員です。これまでは「映画」分野がないため、「演劇」枠で選ばれていました。分野の拡充や選考の透明化を提言した改革案をどう受け止めているのか、聞きました。

 ――文化庁有識者会議が12日に示した改革案で、分野の拡充が盛り込まれました。

 「それ(新しい芸術のジャンルが含まれていない問題)については僕はずいぶん前から考えていたし、ほかの会員にもそういう(拡充すべきだという)意見が多いんじゃないですか。映画や写真は20世紀の芸術です。(これまで独立した分野としてなかったことは)芸術院はそれより昔の、伝統的な芸術家の集まりだったといえます」

 ――今は2021年です。もう少し早く、という思いもありますか。

 「そうです。遅きに失するぐらいですけどね」

 ――改革案のもう一つのトピックとして、外部の目を選考過程に加え、透明性を高める方針が盛り込まれました。

 「その点こそ、会員たち自身が真剣に話し合わなきゃいけない事柄です。もっと早く議論を始めるべきだった。会員がまずこの問題に気がつき、自主的に考えるべきだったのではないかと僕は思います。天下り的に決めるんじゃなくて、もう一回、会員の問題として議論させてほしい」

 ――会員の選考過程に外部の視点を入れるという考え自体はいかがですか。

 「それは僕は否定しないですよ。特に新しい芸術のジャンルについては、会員ではない方からもいろんな意見があるでしょうから、それはどんどん取り入れるべきです。ただ、(選考の議論に加わる外部の)有識者がどういう形で選ばれるのかは問題にならないといけない。それこそ民主的じゃないといけない。有識者という言葉があいまいですね」

 「今までは会員が候補者を立てて会員が選ぶという形でしたけど、それは本当に芸術のことをわかっているのは会員だからだというのと、もう一つは知らないジャンルの芸術家についてはよくわからないというのがあったわけですから。だから、我々が信頼できる(外部の)人たち、つまり僕たちが納得できる人たちに議論に加わってもらう」

 「たとえば映画でいえば、いまの会員たちはそれほど映画を理解しているとは思わない。むしろあまりよく知らないんじゃないかと思う。同時に写真やマンガのこともわからないだろう。僕もよくわからない。そういう場合、それぞれのジャンルの(精通した)しかるべき人たちが参加して選ぶというのが妥当だと思う。有識者にどういう人がなるか、というのは会員がきちんと発言できるようにならないといけない。それは政府が決めることではない」


(後略)

(聞き手・大野択生)