「接種予約システム巡る記事、防衛省「抗議」に野党が批判」

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以下、朝日新聞デジタル版(2021/5/19 22:03)から。

 政府が東京と大阪に設置する新型コロナウイルスワクチンの「自衛隊大規模接種センター」の予約システムをめぐり、防衛省は、架空の情報でも予約ができると指摘した朝日新聞出版と毎日新聞社に抗議文を送った。記者が架空の接種券番号などを使い、予約を試みた点を問題視した抗議だったが、野党側は19日、抗議に至った経緯についてのヒアリングを行った。

 朝日新聞出版のニュースサイト「アエラドット」が予約が始まった17日、防衛省関係者の情報に基づいて、記者が架空の接種券番号や市区町村コードを入力しても予約できたと「欠陥」を指摘する報道を行った。予約はキャンセルした。毎日新聞日経BPのサイト「日経クロステック」も同様の手法で問題を報じた。

 岸信夫防衛相は18日の閣議後会見で「ワクチン接種を希望する65歳以上の方の接種機会を奪い、ワクチンそのものが無駄になりかねない悪質な行為」として、抗議する考えを示した。一方で、市区町村コードを使って入力情報の真偽が一定程度確認できるような改修を行う方針も表明した。防衛省によると、同日中に抗議文を郵送した。

 岸氏は自身のツイートでも会見と同様の内容を発信。実兄である安倍晋三前首相は18日夕、岸氏のツイートを引用する形で「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯と言える」とツイートした。

 こうした抗議のあり方に、野党側からは批判の声が上がった。立憲民主、共産両党は19日に防衛省に対するヒアリングを実施。芹沢清官房長は「サーバーに負担もかける」「不正な予約が積み重なったり、広がったりと波及することがありうる」と抗議の理由を説明した。出席議員からは「取材の自由、報道の自由にプレッシャーをかけることになる」「サーバーに負担と言っても(朝日新聞出版と毎日新聞の)2件だ。そんなに脆弱(ぜいじゃく)なサーバーなのか」といった意見が出た。

 立憲の安住淳国会対策委員長は19日、安倍前首相のツイートについて、「システムに不備があることは明らかであって、指摘した側に対して『愉快犯』なんていう言葉を、一国の総理をやった人が使うべきではない」と指摘した。

「公共性高い」
 アエラドットは「予約システムに重大欠陥」などの見出しで17日に記事を配信した。防衛省関係者の情報に基づいて東京会場の予約サイトに架空の接種券番号や市区町村コード、生年月日を編集部で入力し、予約ができることを確認したという。その後、予約を取り消した。

 毎日新聞は17日のニュースサイトと18日の朝刊で、記者が架空の接種券番号などを入力し、予約作業を進めることができたと報じた。毎日新聞は19日の朝刊で「公益性の高さから報道する必要がある」と判断したと記し、「記者が実際に入力して事実であることを確認した。予約はすぐに取り消した」と説明した。

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朝日新聞出版のコメント 記事は大規模接種に関する予約システムについて誰でも予約できてしまう脆弱(ぜいじゃく)性があることを指摘したものです。取材過程での予約は情報に基づいて真偽を確かめるために必要な確認行為で、記事にある通り、確認後にキャンセルしました。政府の施策の検証は報道機関の使命であり、記事は極めて公益性の高いものと考えています。