「戦中最後の沖縄県知事描いた映画「生きろ」 福岡で上映」

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以下、朝日新聞デジタル版(2021/7/11 10:00)から。

 20万人余りが犠牲になった太平洋戦争末期の沖縄戦。「軍民一体」を強いられた地上戦のなか、県知事だった内務省官僚の島田叡(あきら、1901~45)は、住民に「生きろ」と訴え続けた。その島田の足跡を追うドキュメンタリー映画「生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事」の上映が10日、福岡市中央区KBCシネマで始まった。

 沖縄戦直前の45年1月に知事に着任した島田。映画は、米軍の猛攻の中でも住民とともに徹底抗戦を求める軍にあらがい、周囲に「軍と行動を共にするな」「生きろ」と伝えた島田の姿を描く。

 一方で島田は、多数の学徒を死に追いやった「鉄血勤皇隊」の編成に関わったとみられる。島田の手記は残っておらず、TBSの佐古忠彦監督は当時の軍や県の関係者、住民の証言から島田の人物像と沖縄戦の実相を浮かび上がらせた。

 戦争遂行に協力する行政トップとしての島田と、命の大切さを説く一個人としての島田。佐古監督は「組織の中で、役人が個を保つことの尊さと難しさを教えてくれている」と言う。

 日本では今、財務省の公文書改ざんや総務省幹部への接待など、行政や官僚のあり方が問われる事態が後を絶たない。佐古監督は「組織の論理に個がのみ込まれる状況は、当時も今も変わらないのかもしれない」と話している。

 映画「生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事」は、今月2日から宮崎市の宮崎キネマ館で公開しているほか、30日から大分県別府市の別府ブルーバード劇場、8月9日から鹿児島市のガーデンズシネマ、8月13日から佐賀市のシアター・シエマで順次公開される予定。(藤原慎一