「「今じゃなくても…」 北海道の医療関係者、五輪開催に懸念」

以下、毎日新聞(2021/7/23 17:43(最終更新 7/23 17:50))より。

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 新型コロナ感染者が再び増加傾向にある北海道内では、医療関係者が五輪開催に懸念を募らせている。

 「出場選手やサポートする人を思うと、中止は悲しい。でも開催は今じゃなくても……」。新型コロナ病床がある札幌市内の病院に勤める50代の女性看護師の心中は複雑だ。

 5月5日、札幌でマラソンのテスト大会があり、その8日後には道内の感染者が700人超にまで急拡大した。五輪のマラソン競歩は、その時と同様に「沿道観戦自粛」が呼び掛けられてはいるが「ちょっと見に行こうと思う人もいるはず。人の動きが増えるのでは」と実効性に疑問を感じる。

 道内でも高齢者のワクチン接種が進み、亡くなる人は春の第4波より大幅に減った。でも「ワクチンだって万能ではない」。患者や家族と接する機会も多いだけに「自分も症状の自覚がないまま感染し、職場で広げてしまわないか」と不安がつきまとう。

 開催か中止か、無観客か有観客か、国や組織委員会の議論は遅すぎたと思う。「国民の協力を求めるのなら、もっと強いメッセージを早い段階から示すべきだった」

 市内の別の病院で働く女性看護師(37)は、休憩室で同僚がテレビを見ながら「五輪って本当に必要かな? (私たちが)こんなに疲れ切って、頑張っているのに」とこぼすのを聞いた。

 勤務先はコロナ患者を受け入れていないが、人工呼吸器が必要な筋萎縮性側索硬化症(ALS)の入院患者らがいる。毎日が「自分が陽性になったら、患者さんを危機にさらしてしまう」というストレスや恐怖との闘いだ。

 第4波が収束しても、医療現場の逼迫(ひっぱく)が改善された実感はない。ワクチン接種を受けると2日間の「ワクチン休暇」がもらえるはずだったが、人手不足から多くの看護師は鎮痛剤をこまめに飲みながら、身体のだるさに耐えて働いていたという。

 開幕を前に国のワクチン供給は滞り、五輪関係者と一般市民を切り離す「バブル方式」もほころびが目立つ。「五輪を強行すれば、医療現場はさらに混乱する。資材や人を補塡(ほてん)するなど、まずやるべきことがあるのでは?」と思わずにはいられない。【岸川弘明、源馬のぞみ】