「残る説明責任 学術会議・総務省接待・河井事件・森友 菅首相退陣へ」

以下、朝日新聞デジタル版(2021/9/4 5:00)から。

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 菅政権の1年間では数々の問題が表面化した。そこに共通するのは首相による説明責任が果たされていないことだ。

 昨年10月に発覚した日本学術会議の任命拒否問題では、首相は会議側が推薦した会員候補のうち、人文系の大学教授6人の任命を拒否。会議の独立や学問の自由を脅かすとして、200以上の学会が撤回を求めたが、首相は「人事に関すること」などとして説明を拒み続けてきた。

 「『説明なき政治』が国民の信頼を失い、自民党内ですら誰もついていかなくなった」。任命を拒まれた岡田正則・早稲田大教授(行政法学)は総裁選不出馬に追い込まれた背景をこう分析する。この問題は菅政権の体質を象徴する出来事だった、とも言う。「政治の本質は、為政者が状況を自らの言葉で説明し、リーダーシップを発揮することだが、菅政権はそうした政治本来の機能を失わせた」

 今年2月には、首相の長男が勤める「東北新社」による総務省幹部への接待問題が浮上した。野党側の追及には「(長男は)完全に別人格」と反論。事実解明に指導力を発揮する場面はみられなかった。

 この問題では、市民団体が総務省幹部らを収賄容疑などで東京地検に告発。岩田薫・共同代表(68)は「退任にあたって疑惑を十分に説明しないのは納得いかない。今後もこの問題を追及していく」と話す。

 政治とカネの問題も政権に影を落とした。河井克行元法相夫妻による参院広島選挙区の買収事件では、党本部が夫妻側に提供した1億5千万円の経緯や使途が説明されないままだ。

 事件による政治不信が今春の参院再選挙の敗北を招いただけに、衆院選を前にした県連の危機感は強い。県連ナンバー2の中本隆志県議会議長は3日、「首相であろうが何であろうが、そのときの当事者(である菅氏)が国民の前に出てきて細かく説明していただきたい」と批判した。

 首相が官房長官の時に発覚した森友学園問題では、公文書の改ざんも明らかになったが、2018年6月に公表された財務省の調査報告書で「解決済み」とし、再調査を否定し続けた。

 問題の再調査を求めてきた木村真(まこと)・大阪府豊中市議は「菅氏は一切、異論に耳を傾けず、疑惑を封じてきた」と振り返る。トップの交代で前向きな変化が起きればと期待する。「公文書の改ざんをしてまで何を隠そうとしたのか。誰が首相になっても、引き続き真相解明に向けて追及していく」