以下、朝日新聞デジタル版(2021/9/8 21:38)から。
立憲民主、共産、社民、れいわ新選組の野党4党が8日、国会内で、野党共闘を呼びかける市民団体「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)との政策合意に調印した。政権選択選挙となる衆院選で野党第1党が合意に加わるのは初めてで、自公政権の対抗軸としての野党勢力が固まった。
調印式で、立憲の枝野幸男代表は「どんなに(自民党の)表紙が変わっても、この9年間に壊された立憲主義、民主主義、国民生活。与党全体の構造をひっくり返さない限り、暮らしと命を守ることはできない」と語った。
立憲と共産両党は今後、衆院選の野党候補の一本化に向けた協議に入る。最終的に、党首会談を開いて選挙協力に合意する見通しだ。一方、国民民主党は調印式に参加しなかった。
市民連合は2015年、安倍政権が進めた安全保障法制に反対する国会前デモをきっかけに結成。17年の衆院選では当時の民進党など野党4党に共闘を呼びかけたが、希望の党騒動で民進は分裂して果たせなかった。19年参院選では立憲、共産など野党5会派が政策合意をした経緯がある。
合意した政策は①憲法②コロナ対策③格差是正④エネルギー⑤ジェンダー平等⑥行政の透明化の6項目。具体的には、安保法制や特定秘密保護法の違憲部分の廃止▽原発のない脱炭素社会の追求▽選択的夫婦別姓制度の実現などを挙げた。(吉川真布、横山翼、南彰)
枝野氏「市民連合のみなさんの尽力によって」
次期衆院選で、自公政権に対抗する「野党共闘」の枠組みができた。菅義偉首相の退陣で、野党は自民党の「新しい顔」を相手にした厳しい戦いも予想される。立憲民主、共産両党を中心にどこまで小選挙区の候補者を一本化できるかが焦点だ。「網羅的かつ重要な政策テーマについて、市民連合のみなさんの尽力によって各党とも共有できたことを大変うれしく思っている」
8日朝、国会内で開かれた立憲、共産、社民、れいわ新選組の4党が出席した共通政策の調印式。協定書に署名した立憲の枝野幸男代表は、連携の橋渡しを担った市民団体「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)への感謝を口にした。
共通政策は6本柱だ。
新型コロナ禍で浮き彫りになった新自由主義的な政治のゆがみを正すため、「格差と貧困の是正」を強調した。消費税減税を明記し、選択的夫婦別姓制度やLGBT平等法などの「ジェンダー平等」も柱の一つに据えた。
これまで、衆院選での野党共闘は厳しい道のりだった。4年前は民進党の前原誠司代表(当時)が、小池百合子東京都知事がつくった「希望の党」への合流を決断。市民連合は、野党第1党の分裂騒動に振り回され、共産、社民と、枝野氏が立ち上げた立憲の3党の共闘にとどまった。
今回も、立憲が共産と連立政権を組むかのような表現などを敬遠し、調整は難航した。最終的に「政権交代」ではなく、「新しい政治を実現」という文言で折り合った。
ただ、民進党の流れをくむ国民民主党は「そぐわない部分が多い」(榛葉賀津也幹事長)として党としての調印を見送り、完全には足並みはそろわなかった。
現職は9割すみ分け進む
「この政策をしっかり高く掲げ、結束して選挙を戦い、選挙に勝ち、新しい政権をつくるために頑張り抜くことを約束したい」。共産の志位和夫委員長は調印式でこう力を込めた。この後、次期衆院選の方針を決める党中央委員会総会で、志位氏は「政党間の協議を速やかに行い、政権協力、選挙協力について前向きの合意を作り上げ、本気の共闘の体制をつくる」「政権を争う総選挙で選挙協力を行う以上、政権協力についての合意は不可欠だ」と演説した。
現在、立憲、共産両党は現職が立候補する小選挙区では9割近くすみ分けがされている。市民連合や立憲幹部は「自民候補と接戦になっている新顔の20~25の選挙区で、候補者を一本化できれば大きく結果が変わる」と期待している。
立憲側は、重複する選挙区で共産が譲歩してくれることを期待する。ただ、8月の横浜市長選では、立憲の求めに応じて共産が「自主的支援」に回ったが、共産内には「対等・平等とは違う」(共産の小池晃書記局長)との不満が募る。
また、「野党連合政権」を提唱する志位氏の求める「政権協力」について、立憲の枝野氏は「連立政権は考えていない」との立場だ。2人は衆院選前に党首会談を行う予定だが、どのような合意をつくれるかが焦点だ。(横山翼、南彰)
(視点)市民主導、自公政権への対抗軸固まる
「1強多弱」の国会で、安倍政権が安全保障関連法を与党多数の採決で強行した2015年9月。法律に反対する市民からわき起こった「また選挙の前になったら、バラバラになるかもしれない。野党が協力して、次の選挙に勝ってください」との声が「野党共闘」の原点だ。「非共産」を掲げる連合に支援される旧民主党系と共産党の間には長年の溝がある。「市民連合」が両者を共通政策で橋渡しする「ブリッジ共闘」を進めてきた。4年前の衆院選では「希望の党」騒動で頓挫したが、今回、政権選択の衆院選で初めて自公政権に対抗する共闘の態勢を作ることができた。
衆院選に小選挙区制が導入されて今年で25年。自民党は00年の衆院選以降、組織票を持つ公明党と候補者を一本化し、旧民主党系を相手に6勝1敗だった。政治に緊張感を取り戻すための対抗軸が結成できたと言える。
立憲民主、共産両党の間では日米安保条約に対する考え方が異なり、外交・安全保障を共に担う連立政権を組む関係には成熟していない。「選挙互助会」にとどまらず、具体的に政治をどのように一緒に動かしていくのかが課題だ。(南彰)(南彰)