ステルス作戦なんかに騙されない、本質をつかめる観察力を 教育的社会を 市民と野党の共闘を

 東京都知事選についてのわたしの素人予測は、小池百合子氏に蓮舫氏が猛追。その差10ポイントから、さらに僅差で、いずれにしても小池百合子氏と蓮舫氏の争いで勝敗が決まる。小池氏か蓮舫氏のいずれかが都知事に当選して、石丸氏は第三位と予測していた。希望的に過ぎるかもしれないが蓮舫氏の勝利も可能性ありとすら予測していた。

 しかし、結果は、投票率60.62%で、小池百合子氏が、291万票(42.77%)。石丸伸二氏が、165万票(24.30%)。蓮舫氏が、128万票(18.81%)となった。

 東京都知事選について素人ながら個人的な総括めいたものはすでに書いた。

amamu.hatenablog.com

 補足的に、今回は、ステルス作戦とは何だったのか、そして市民と野党の共闘の課題について、一言つけ加えたい。

 さて「ステルス」(Stealth)とは、なにか。「ステルス」とは、「レーダー機器に発見されない軍用機をつくるシステム」 (a system of making military aircraft that cannot be discovered by RADAR instruments) をいう。「ステルス」とはそもそも物騒な軍事用語なのだ。

 小池百合子氏は、現職の強みを生かし、事前運動的に、防災ブック配布や、これは大きな批判のネタになってしまったがプロジェクションマッピングでの「宣伝」。選挙前後も、「公務」と称して、選挙運動まがいのメディア露出を続けた。これは「候補者」としての立派な宣伝なのに「公務」という着物を羽織って「候補者」という姿を隠したわけだ。当然公開討論会からは逃げる。まさに「ステルス」である。

 自民党公明党の支援は、公明党は裏方に回り、とりわけ裏金・自民党、萩生田自民党の応援はマイナスになるということから、完全に封印。自民党はもちろん公明党の表立っての応援演説は一切おこなっていない。東京都議会においては都民ファ自民党公明党、そして都庁役人に、「答弁拒否」「答弁差別」ができるほど鉄壁の不正な守りであるにもかかわらず、演説会では、政党色の見えにくい区長レベルの応援演説にとどめている。言いたいことは、小池百合子氏の本質は、自民党公明党都民ファ、おそらく国民民主も、もちろんディベロッパーや電通、カルトなどに熱烈に支援されているにもかかわらず*1、「無党派」を演じている、否、「無党派」を演じられるということだ。そこに騙され、つけ入れられて、投票してしまう無党派層がいるということである。

 まさに小池百合子の正体を見せない「ステルス」作戦ではないか。

 「ステルス」とは、相手に発見されないシステムなのだから、まさに、わからぬよう「騙すシステム」ということだ。冗談になってしまうが、「ステルス」などというカタカナ語にだまされてはいけない。

 次に、二位になった石丸氏は、どうか。

 当初、維新に言い寄られたが石丸氏が断ったというようなニュースをどこかで聞いたことがある。わたしもそんなものかと思い込まされたが、石丸氏などチェックしていなかった私は、今となっては、あれは「無党派」であることを強調する演出だったのではないかと、今となっては思えてならない。というのも、以下のニュースを見たからだ。

 

www.msn.com

「石丸伸二氏から支援依頼あった」 維新幹部が明かす 都知事選巡り (msn.com)

  この記事から少し引用する。

音喜多氏は知り合いに紹介されて石丸氏と面会したといい、石丸氏側から「維新は政策も近い。支援をお願いできないか。ただ政党色は付けたくない」と依頼されたと説明。音喜多氏は支援の条件として「維新と政策協定を結んで推薦を取ってもらう形」を望み、折り合わなかったという。「(維新側から)推薦を申し入れて断られたという認識はない」と語った。

 今のマスコミでは、ほとんど報道しないため(マスコミ自体がステルスだ!)、私も、わざわざ調べざるをえず、調べたのだが、そもそも石丸氏に眼をつけたのは、安倍元首相夫妻との親交でも知られるドトールコーヒー創業者の鳥羽博道名誉会長といわれている。石丸氏の選挙参謀は、「選挙の神様」の異名をとる事務局長の藤川晋之助氏。藤川氏は、大阪市会議員を2期つとめ、東京維新の会事務局長を歴任した選挙プランナーである。選対幹部には、自民党都連最高顧問の深谷隆司通産相の娘婿で選対幹部の小田全宏氏がついている。背後には、ドトールKDDI、貸会議室のTKPらがちらつく。

 これでは、「無党派」どころか、自民や維新の発射台に乗る候補とどこが違うのか。

 けれども、大手マスコミや、ネットのミニコミですら、石丸氏は、「かたちは「無党派」だが、その実態は、これこれこういう支援もしっかりとついている」と、選挙期間中に何故大々的に報じないのか。

 実態は、今の日本の言論状況では、こうした事実を伝えるメディアは、少しの、あちこちの週刊誌くらいだ。いわば、ステルスというべき状況で、こんなステルス作戦実行中のマスコミ・ミニコミだから、真実を知るには、時間もお金も、コストがかかる。そんなことをやれる暇な有権者は少ないから、大方、本質も実態もわからぬまま投票日となってしまう。

 東京維新の会の幹事長・音喜多氏がまさに「石丸氏側から「維新は政策も近い。支援をお願いできないか。ただ政党色は付けたくない」」と語っているように、明らかに、石丸氏は、少なくとも維新的であり、「政党色は付けたくない」と、小池百合子氏と同様に、まさにステルス作戦を採用したのだ。

 なぜ、ステルス作戦なのか。

 それは、既成政党や財界とは無関係で、「無党派」・市民派を装うことができること。そしてその分注目を浴びる可能性があるからではないのか。そうして有権者を騙せるからだ。

 たとえば、仮に、「維新の石丸です」と政党色をつけたら、有権者にはこれまでの維新の実績からなんとなく正体が透けて見えるだろう。維新の候補者ということで判断をつける有権者は多いだろう。現在、維新は大阪万博で人気をかなり落しているから、仮に「維新の石丸」だったら、票数は伸びたのか、減らしたのか。想像の域を出ないが、減らしたのではないか*2

 私が強調するまでもなく、6割弱が無党派層といわれる大票田の東京都知事選では、イメージが(も)重要なのである。

 東京都知事選では、無党派にどう食い込むか、食い込めるかが最重要課題のひとつであることは言うまでもない。

 一方、今回、大方の予想に反して、三位に沈んだ蓮舫氏は、どうだったのか。

 わたしは、小池百合子氏の三選だけは何としても阻止したいと考えていたので、「反自民・非小池」を打ち出した蓮舫氏を支持していた。自民の、公明の、ウソつきの、小池百合子氏だからこそ、日本の民主主義のために、その三選を絶対に阻止しなければならないと考えていた。

amamu.hatenablog.com

 今回の選挙戦で、蓮舫氏の決意表明。そして、立憲民主党を離党し、まさに無党派候補者として、オール東京の支援を呼びかけたことに、特段蓮舫氏のファンでもなかったわたしでも、拍手喝采をした*3立憲民主党共産党・社民という既成政党をコアな跳躍台であったことに安心感を得て、さらに広く無党派有権者に支持を広げるために、一人ひとりの市民にまさに決起・一揆ともいえる「ひとり街宣」にわくわくし、新宿駅前の若者のライブコンサートのような街頭宣伝に興奮し、該当演説会の、蓮舫氏はもとより、立憲民主や共産党の志位氏や「良いほうの」小池氏*4の演説にも熱いものを感じた。久し振りの聴衆の結集に熱気を感じた。

 けれども、6割弱が無党派層といわれる大票田東京の都知事選では、やはり、無党派層有権者に声を届ける点では全く足りてなかった。蓮舫選対は、そこまでの余裕がなかったのかもしれないが、無党派有権者に声を届けることをもっと最重要視すべきだったのではないか。その意味で、既成政党がコアな発射台を形成しながらも、応援演説には、もちろん既成政党の大物政治家も街宣カーに上がってよいのだけれど、さらに多くの言論人(大学教授や弁護士、作家、映画監督、映像作家、シナリオライター、ジャーナリスト、放送キャスター、スポーツ評論家、等々)や市民(会社員、建築家、商店、幼稚園や保育園、医者、看護婦、社会福祉関係、等々)、若者(ジェンダー活動家、気候変動活動家、環境活動家、原発活動家、インフルエンサー非正規労働者、アルバイト、学生、ミュージシャン、ダンサー、ラッパー、スポーツ愛好家、中間層、等々)、芸能(俳優、落語家、お笑い芸人、歌手、アーティスト、等々)と、広範囲に、まさに広げに広げなければならなかったのではないか*5

 美濃部都政の頃の宣伝カーに言論人や芸能界のきら星のような著名人の氏名が書かれた垂れ幕をSNSで見たが*6、現在が当時よりもより困難な時代であることは重々承知しているが、その意味で、市民と野党の共闘をもっと骨太に多彩に広範囲に展開したいところだ。否、しなければならないのではないか。現職の都知事を破るには、やはり、時間をかけた周到な政策の練り上げと体制と準備が必要ということではないか。

 また、小池百合子氏や石丸伸二氏の、こんな簡単なステルス作戦くらい、簡単に見破ることのできる観察力を養う教育が必要だ。

 もちろん、権力に支配されたマスコミからのほとんど皆無にひとしい、そして偏った情報提供。シティズンシップ教育どころか、教科としての道徳が導入されている学校らしくない学校と教育らしくない教育。清濁合わせ持つネットのSNSYouTube。こうした、ある意味では、非教育的な社会環境のなかで、ステルス作戦なんかに負けない、本質をつかめる観察力を身につけられる教育的な社会をつくること。本当の意味で、市民と野党の共闘をすすめることが必要ではないか。

 東京都知事選は、小池百合子氏の”圧勝”に終わったが、圧勝といっても、前回より70万票も減らしている。そして、ステルスでない戦線。たとえば、東京都議補選では、自民党は、2勝6敗と、惨敗している。

 ステルス作戦なんかに騙されない、本質をつかめる観察力を身につける必要がある。そうした教育的な社会をつくる必要がある。そして市民と野党の共闘をさらに前進させなければならない。

*1:当然予想されることだが、実際は小池百合子氏側から依頼もしていたようだ。https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/357308

*2:開票当日、出口調査の段階で2位に浮上した石丸伸二氏のインタビューがかなりの不評でその人気と評判をかなり落としているらしい。MSN

*3:蓮舫氏の決意表明のタイミングと内容はすばらしく、ブログに記事を書いたほどだ。【2024東京都知事選】おいちゃん(森川信)の「効いたねぇ」と室戸半兵衛(仲代達矢)の「これまでですな」 - amamuの日記 (hatenablog.com)

*4:言うまでもなく日本共産党小池晃氏のこと。

*5:もう一つ重要なテーマとして、メディアをどう立て直すのかという問題がある。メディア全般が激しい変化にさらされている中、テレビや大手新聞をどう立て直すのか。そしてネットの世界をどう活用するのか。あらたな「ひとり街宣」や全戸配布やビラまき等をどう活用するのか。メディア全体の再構築の問題を避けて通ることはできない。

*6:有田芳生氏のXより。経済学者の大内兵衛氏や俳優の渥美清さんの名前が見える。https://x.com/aritayoshifu/status/1807232021296734682?t=s1t8aC2rJbzU6wIIoKWbxQ&s=19