スコットランドに行ったことはないけれど、Talking Heads の David Byrne がスコットランド系アメリカ人であるというように、少しばかり洋楽を知れば、ときにスコットランドに遭遇する。短期間でも、アメリカ合州国やアオテアロア・ニュージーランドに滞在すれば*1、ときにScotland というキーワードに出会う。
それで、行ったことはないけれど、スコットランドといえば、エジンバラ、バグパイプ、民族衣装のキルト、クラン、ハイランズとロウランズ、スコットランド・ゲール語(Scottish Gaelic)、反イングランド、独立問題、そしてスコッチウィスキー*2くらいが思い浮かぶ。逆にいえば、それくらいしか思い浮かばない。あとは明治時代の日本のお雇い外国人ではスコットランドからは技術系の職人が多かったというようなことを聞いたことがあるくらいか。
あらためてブリティッシュイングリッシュに向き合ってみようということで、Scotland を勉強してみたいと思い、YouTube で Scotland の歴史や観光案内を見ていたら、Caledonia という語彙に遭遇した。
まったく迂闊なことに、Caledonia とは、Scotland のことだという認識が全くなかった。
そうか、そうだったのかという感じである*3。
それで、少し調べてみたら、”Caledonia” (1978) という唄があるではないか。
これは、スコットランドのドギー・マクリーン(Dougie MacLean)がフランス滞在中に望郷の念にかられて書き上げた唄だという*4。
アイルランドのドロレス・キーンやケルティックウーマン、スコットランドのFrankie Miller、Paolo Nutini や Amy Macdonaldなど、少なくないケルティック系アーティストがこの唄をカバーしていて、スコットランドの非公式国歌と言われているようだ。
そうか。カレドニアとは現在のスコットランドを含む「ケルト文化圏」のことだったのか。
*1:たとえば、ニュージーランドの都市ダニーデン(Dunedin)といつ名前は、スコットランドの首都エジンバラのゲール語名である。
*2:俺でも名前を聞いたことのあるウイスキーは、たとえば、Ardbeg、Bowmore、Glenfiddich、Glenlivet、Lagavulin、Laphroaig、the Macallan、Taliskerなど。glenはおそらく「渓谷」を意味するものと思うが、ネーミングが英語名というよりはスコットランド・ゲール語(Scots Gaelic)が多いため、発音すらできない名前が少なくない。多くは谷や山や土地柄をあらわすスコットランド・ゲール語のようだ。イングランド地域の英語(English)という言語がウェールズ語(Welsh)やスコットランド・ゲール語(Scottish Gaelic)をいわば言語戦争で駆逐したわけだが、ハイランドのスコットランドゲール語はしぶとく残ったと言えるのかもしれない。今後、スコッチウィスキーのそれぞれの銘柄名を見る際に、そう思うようにしよう。https://youtu.be/jcQglJyNL0w?si=K5f1kDGdk0kBrNJr "How to pronounce Scotch Whisky" という Youtube が参考になった。
*3:洋楽の中には、アイルランドやスコットランドの影響をうけたものも当然あるから、ときに「カレドニア」という語彙は何度かは聞いている。たとえばVan Morrison &The Chieftans の"Irish Heartbeat"のピーター・バラカン氏のライナーノーツには、「ヴァンが一時期バック・バンドに付けていた名前”カレードニア・ソウル・オーケストラ”、そして彼自身が持っている制作会社”カレードニア・プロダクションズ”からも分かるように、彼は常にアイルランド人であり、アイルランドの文化を背負っていることを意識していた。(”カレードニア”とは、古代のケルト文化圏をさす名称である)」とある。これからすると、カレドニア=スコットランドというより、現在のスコットランドも含んだ「ケルト文化圏」がより的確な意味ということになるのだろう。なお、アイルランドの文化・伝統をたたえる詩的なエリン(Erin)という名称もある。