「うそ」「まさか」「信じられない」という意味の"Get out."

Tapestry

 長年英語教師をやってきた私はGet out.が「出てけ」の意味であることは当然知っている。
 だけれども、Get out.に「うそ」「まさか」「信じられない」のニュアンス*1があるとは知らなかった。
 (ええ、本当なの) これを知ったとき、まさに、Get out!(ええっ!)の気持ちであった。
 そういえば、最近、NPRのCar Talkを聞くようにしているのだが、この番組のパーソナリティであるTomやRayが相手の言っていることに反応してGet out.と言っていることがよくある。そして、それを「信じられない」の意味でとらえると、ぴったり来ることに気がついた。
 getやoutなど、基礎語彙としてすでに知っている単語でも、使われ方やニュアンスがわからなくて、こうした例に出会うと、まさに絶望的な気持ちになる。
 イギリス人の同僚に聞いてみたら、Get outはアメリカ英語で、自分だったら、No wayを使うだろうと言っていたから、Get outはたしかにアメリカ英語なのだろう。

*1:get outのコアの意味が「出てけ」の意味であることは間違いない。ただし、アメリカ英語では、信じられないことを相手が発言したとき、「出てけよ(get out)」という返答をすることがありうるということなのだろう。日本語でも、相手が信じられないことを発言したときに、「(うそだろ)出てけよ」という返答が市民権を得る日も来るかもしれない。私も含めて何人かにはピンと来ないだけの話で、「出てけよ」と白けて発言することもはやるかもしれない。ただし、get out=ウッソーと丸暗記することは意味がない。機械的学習では、コトバの演劇的ニュアンスに太刀打ちできない。実は、この辺を教えることに教育の意味があると思うのだが。

"feel the earth move"の深い意味

Tapestry

 いま「英語フレーズ4000」を読んでいるところなのだが、今日もそうした絶望的な気持ちにさせられたフレーズのひとつを紹介しておこう。
 それは、feel the earth moveというフレーズだ。
 このfeel the earth moveが用いられているDid you feel the earth move?は、ベッドで男性が女性に聞くWas it good for you?とほぼ同じ意味で使われるという。この説明の箇所を読んだときは、まさに頭を殴られた気持ちになった。
 (ええ、まさか、信じられない) これもまさにGet out(ええっ!)の経験だった。

 1971年のキャロル・キング(Carole King)のアルバムTapestryの一番目の曲の題名は、I feel the earth moveという曲で、この中に、"feel the earth move"が含まれている歌詞がある。

I feel the earth move under my feet
I feel the sky tumbling down
I feel my heart start to trembling
Whenever you're around

 この歌詞が直接、そのことを歌っているとは思わないけれど*1、"feel the earth move"が意味深な慣用句だとすれば、この歌詞にも性的なニュアンスが含まれていると言って差しつかえない。
 私のショックは、これが慣用句だとはつゆ知らず、キャロル・キングが高揚感(emotional high)から作り出したオリジナルの詩だと思い込んできたことだ*2
 性的な含意のある"I feel the earth move"を、知覚動詞の原形不定詞の例文として教室で使ったことだってあるから、高校生に対して随分と大人の例文で教えたことになる。
 まさに浅学を恥じ入るばかりである。

*1:同僚のカナダ人とこの点を話題に話をしてみたが、直接言及しているわけではないと、彼も同意見だった。

*2:同僚のカナダ人も、feel the earth moveというフレーズはキャロルキングの創作ではない。以前からあったフレーズだと言っていた。