物語の舞台であるファンガラーという土地柄

 ところで、このファンガラー(Whangara)という地名だが、私の愛読書のひとつであるロンリープラネット旅行ガイド「ニュージーランド」で調べてみると、ファンガラーについては、小見出しすらなく、その情報は、ほんの数行しか記されていない。ウィティ=イヒマエラ(Witi Ihimaera)の素晴らしい小説を読むと、この地のマオリ文化や神話を感じ取れる、とだけ紹介されている。イギリス語で書かれた他の自動車旅行案内本を見ても、ファンガラー*1は、巻末の索引にも登場してこない。
 1769年にジェームズ=クックが自ら乗る船の補給のために立ち寄った湾で、土地のマオリと小競り合いがあり、これはダメだと思ったクックが「貧しい湾」(Poverty Bay)と名づけたポバティベイという湾が東海岸にある。ギズボーン(Gisborne)*2に近いのだが、このポバティベイから北上したところに、ファンガラーはある。
 私はまだ訪れたことはないが、東海岸は、マオリの影響が色濃く、また「未開発」で、観光ルートからは隔たっていると言われている。ワイカトタイムズの見出しは、だから、「波に乗って、そうしたファンガラーから、栄えあるオスカー賞へ」というニュアンスがあるのだろう。小説がファンガラーについて書かれていることはもちろんだが、あの映画も、ファンガラで撮影されたという。

*1:Illustrated Maori Place Namesによれば、whangaは、harbour, raは、sunという意味で、Sunny bayという意味だとある。

*2:ギズボーンキャプテン・クックがヨーロッパ人としてはじめてニュージーランドに上陸した場所として知られている。