マオリのけなげな少女パイの物語

 この映画の中でパイ(Pai)という少女を演じたケイシャ=キャッスル=ヒューズ(Keisha Castle-Hughes)は、この映画出演の時は、ほんの11歳の少女で、この映画出演まで演技の経験は全くなく、何千人もの生徒から選ばれたということは、すでに日本で聞いて私は知っていた。オスカー賞で主演女優分野にノミネートされた女優としては、最も若い女優だという。アレックスに聞いてみると、ノミネートされたものの、残念ながら賞までは取れなかったらしい。
 けれども、この映画は大ヒットして、全世界での売上げが6千500万NZドルだというから、日本円にして45億5000万円もの金額にもなる。30もの国際的な賞も含めて、数々の賞を取ったこの作品が、東京は恵比寿の映画館くらいでしか商業的に上映されなかったのはとても残念だ。
 さて物語の内容だが、パイという名の主人公は、最初の子どもであるのに、女の子なのであった。マオリの伝統では、最初の子どもとして男の子が望まれているから、伝統的マオリである祖父は、それが気に入らないのだ。それでも、パイは勇敢な女の子で、祖父に気に入られようと努力するのだが、祖父には受け入れてもらえない。日本語で言うなら、彼女はけなげな少女なのである。
 そして、宮崎駿の作品群を持ち出すまでもなく、けなげな少女の物語に我々は弱く、主人公パイにいっぺんに心情的に同情してしまうのは、けっして私だけではあるまい。
 「欠点がないわけではない」と、ワイカトタイムズの映画評は言う。それにもかかわらず、私はまだ未見だが、マオリをテーマとした映画の中ではとりわけ有名な”Once Were Warriors”以来の最重要作品であることに間違いないと映画評は言うのだ。
 監督は、女性監督のニキ=カーロ(Niki Caro)。
 まだ観ていない方は、機会があったら是非見て欲しい映画のひとつだ。