「年金水準、高成長でも2割減 厚労省が30年後見通し」

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以下、朝日新聞デジタル版(2019年8月27日18時19分)から。

いまの年金水準と、将来の見通しは?
 公的年金の将来の見通しを示す年金財政検証の結果を27日、厚生労働省が公表した。高い経済成長を見込んだ場合でも、年金水準は約30年後に現在より約2割低くなる見通しが示された。前回の2014年検証から目立った改善はみられず、制度改正や高齢者の就労促進などで「支え手」を増やす必要性を強調する内容となった。

 年金財政検証は5年に1度、100年先までの見通しを点検するために行われている。老後の生活費が2千万円不足するとした金融庁審議会の報告書をきっかけに、注目が集まった。

 少子高齢化で、年金の「支え手」となる現役世代が減り、「支えられる側」の高齢者が増えている。いまの年金制度は、現役の負担が重くなりすぎないように保険料の上限を決め、その範囲で年金を払う仕組み。収支バランスが安定するまで、平均余命の伸びなどに応じ、年金水準を自動的に引き下げる仕組み「マクロ経済スライド」が導入されている。

 検証では、将来の物価や賃金の上昇率などが異なる六つのケースごとに、どこまで年金水準(所得代替率)を下げる必要があるかを点検した。所得代替率とは、モデル世帯(平均収入で40年働いた会社員と専業主婦)が65歳で受け取り始める時点の年金額が、その時の現役世代の平均収入の何%になるかを示す数値だ。

 19年度の所得代替率は61・7%で、14年度(62・7%)より1ポイント低かった。経済の高成長と高齢者らの就労が進むと想定した上位3ケースでは、年金水準の引き下げは46~47年に終わり、その時の所得代替率は50・8~51・9%(前回の同様ケースで50・6~51・0%)となった。政府が約束する「50%以上」を維持した。

 一方、経済成長と就労が一定程度にとどまる2ケースでは、44・5~46・5%(同42・0~45・7%)に。低成長で就労が進まないケースでは、36~38%(同35~37%)まで下がる計算になった。

 厚労省の担当者は「年金の財政状況は、5年前と比べてそんなに変わらない」と分析。その上で「経済成長と就労を促すことが、年金水準の確保のためにも重要」としている。検証では、来年の通常国会での制度改正を見据え、厚生年金のパートらへの適用拡大や、働く高齢者の厚生年金を減らす「在職老齢年金制度」を廃止した場合などの試算も示した。(山本恭介)