「「ワクチン打っても収束疑問」 WHO日本人職員に聞く」

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以下、朝日新聞デジタル版(2021/1/31 9:00)から。

 新型コロナウイルスの世界の累計感染者が1億人に達した。世界保健機関(WHO)で感染症の危機対応を担う進藤奈邦子シニアアドバイザー(57)に現状の評価と今後の課題を聞いた。

しんどう・なほこ 1963年生まれ。東京慈恵会医科大卒。国立感染症研究所感染症情報センターの主任研究官を経て2002年にWHOに派遣され、05年に正式に職員に。現在、WHO健康危機管理プログラムの地球規模感染症ハザードのシニアアドバイザー。

 ――新型コロナの対応をめぐり、国によって明暗が分かれた。

 パンデミック(世界的大流行)対策は準備がすべて。重症急性呼吸器症候群SARS)や鳥インフルエンザなどを経験したアジア諸国には再発のシナリオもあり、国民に浸透していた。自然は色々なパターンを見せて演習させてくれた。準備する側は、全てのシナリオを考えておかなければならなかった。

 ――欧州は対応に苦慮し、ロックダウン(都市封鎖)を繰り返している。

 国民に感染症への理解が共有されておらず、最初のロックダウンをせざるを得なかったのは理解できなくもない。ただロックダウンは時間稼ぎ。その間に接触者を追跡できる態勢を整えるべきだったが、患者が減り、みんなバカンスに行った。9月に学校や仕事が再開して感染がまた爆発し、同じことを繰り返した。

 検査数を増やしても、その後の介入が決まっていなければ意味がない。陽性になった人の周りを疫学的に洗い、クラスター(感染者集団)を割り出し、スーパー・スプレッディング・イベント(多数の感染者を生む機会)を止め、似たような状況を防ぐ方策を考えなければいけない。追跡をアプリに頼ろうとした国もあるが、やはり対応をよく理解した人が担うべきだ。

 感染症対応では、移動や貿易への影響を最低限にするのが国際保健規則の精神。ロックダウンは本来、人権や倫理的観点から非常に問題がある。

 (後略)

(ロンドン=下司佳代子)