以下、朝日新聞デジタル版(2020年7月19日 19時13分)から。
新型コロナウイルス感染者を受け入れる病院の7割を占める公立・公的病院が経営難に陥っている。地域医療の中核としてコロナ対応の最前線を担うが、人手不足などから、収益が見込める健康診断や救急外来を削って対応。病床稼働率は下がり、外来患者も減っている。現場では、地域の医療体制が崩壊しかねないとの懸念が広がる。(山中由睦、神田誠司、川田惇史)
6月、感染症指定医療機関で、コロナ感染者8人を受け入れた東北地方のある公立病院を訪ねた。
一般患者の立ち入りを禁じたフロアに上がると、床が赤と緑に色分けされていた。赤は新型コロナの感染者が入院する「リスクゾーン」で、一般患者用の6病床を感染者用に変更。患者1人に3人の看護師がつくこともあり、収益部門の救急外来や健康診断の受け入れを制限して対応してきた。院内感染のリスクを避けるため、手術も縮小した。
その結果、4~5月の外来患者は前年より25%近く減り、5月の赤字は約1億円。受診を控える動きもあり、病院事務長は「昨年度も赤字で、この調子だと秋にも資金が底をつく」。国の補助は、軽症者受け入れで1床あたり1日1万6千円にとどまる可能性があり、「到底赤字。給与が払えず、医療スタッフが辞めれば第2波はもたない」と嘆く。
厚生労働省によると、感染者を受け入れた922病院のうち、自治体が設置する公立病院と日本赤十字のような公的病院が約7割を占める。「経営に影響するので、民間病院には頼みにくい。税金を投入している公立病院は社会的責任も大きい」と大阪府の担当者はいう。
ただ、公立病院も医師不足による人件費高騰や、老朽化した施設の改修などで865病院の約6割(2018年度決算)が赤字で、そこにコロナ対応が重なり資金繰りが悪化している。
(後略)
(山中由睦、神田誠司、川田惇史)