「9条の発案者は幣原喜重郎なのか 立証を試みた研究者」

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以下、朝日新聞デジタル版(2021/5/4 19:00)から。

 戦争放棄を定めた憲法9条を最初に言い出した人はだれなのか――。東アジア近現代史の研究者で都留文科大名誉教授の笠原十九司さんは、「発案者は元首相の幣原喜重郎(しではらきじゅうろう)であることを証明する」として昨年4月、「憲法九条と幣原喜重郎」(大月書店)を出版。研究者の間で長年くすぶってきた「幣原説」に光を当てた。憲法施行から3日で74年になる。

 ――笠原さんと言えば南京事件の研究者として知られています。9条に関心を持った理由は。

 「安倍晋三前首相が改憲を公言したことがきっかけです。戦後憲法で保障された国民主権、平和主義、基本的人権を定着させる努力が必要であると改めて認識しました。その時、『平野文書』を知人の著書で知り、研究に着手したのです」

 ――平野文書とは。

 「元首相の幣原喜重郎から衆院議員だった平野三郎が聴き取った記録です。幣原は連合国軍総司令部GHQ)と憲法改定の交渉にあたりました。その際に戦争放棄を思い立ち、最高司令官マッカーサーに秘密会談で提案したことを、死去の直前、1951年に打ち明けています」

 「平野文書は64年に公表されましたが、あまり信用されていませんでした。私は平野文書を含む関係史料を再検討し、時代状況を構造的に把握することで9条の原点解明に努めました」

(後略)

(聞き手・吉沢龍彦)