前川喜平氏の「今年こそは」(「東京新聞」2021年1月3日)

 前川喜平氏の東京新聞の「本音のコラム」が素晴らしい。

 さすがである。

 

 今年こそは

            前川喜平(現代教育行政研究会代表)

               「東京新聞」2021年1月3日

 

 思えば悪夢の八年だった。時代を八十年も昔に戻そうとする人たちが政治権力を握り、学校に教育勅語を持ち込もうとしたり、自己抑制や自己犠牲、全体への奉仕や親と祖父母への敬愛を押しつける道徳教育を教科化したり、大日本帝国侵略戦争や植民地支配や人道に反する残虐行為をなかったことにする歴史教育を推進したりした。

 権力者は国政を私物化し、官僚組織は権力者の下僕になり下がり、戦争放棄罪刑法定主義、国民の知る権利、表現の自由、学問の自由、三権分立といった憲法原則に反する政治がまかり通った。首相が数え切れない虚偽答弁を行い、それを覆い隠すために官僚も虚偽答弁をした。あったことをなかったことにする文書の改竄(かいざん)や放棄、黒を白と言いくるめる詭弁(きべん)も横行した。

 新型コロナウィルスに対しては、科学的根拠のない場当たり的な対策が続き、アベノマスクに何百億もの税金が無駄遣いされ、全国一斉休校が子どもたちに災難を与え、GoToキャンペーンの中で第三波の感染爆発を招いた。失業者、廃業者、路上生活者、自殺者が増え続けているのに株価だけは上がる異常さ。

 これが悪夢でなくて何だろう。今年こそは、この悪夢を振り払い、真っ当な政治、真っ当な生活を取り戻す年にしたい。みんながそうしたいと思えば、そうなる。