「(社説)延長国会 政権の都合むきだしだ」(朝日新聞)

amamu2018-06-26

 以下、朝日新聞デジタル版(2018年6月26日05時00分)から。

 延長国会最初の本格論戦だというのに、加計・森友問題の真相解明は全く進まず、重要法案や当面の政策課題をめぐる議論も深まらなかった。残る1カ月の会期を、政権が疑惑にフタをしたまま、問題の多い法案を強引に成立させる舞台にしてはいけない。

 きのう参院予算委員会の集中審議があった。獣医学部新設をめぐり、加計学園の加計孝太郎理事長が記者会見して以降、初めて安倍首相が答弁に臨んだ。

 加計氏は愛媛県文書に記された2015年2月の首相との面会を否定、学園事務局長がウソを伝えたと説明したが、説得力のある根拠は示されなかった。

 首相は改めて、加計氏との面会を否定。加計氏の会見内容については「政府としてコメントする立場にない」と繰り返した。一国のトップの言動が「捏造(ねつぞう)」されたというのに、このひとごとぶりには驚く。野党が求める加計氏の証人喚問にも、「国会でお決めになること」と、取り合わなかった。

 森友問題でも、政権の後ろ向きな姿勢が際立った。

 先週の参院決算委員会で、共産党議員が独自に入手した内部文書を明らかにした。財務省国土交通省のすり合わせを記したもので、学園との国有地取引をめぐるやりとりを「最高裁まで争う覚悟で非公表とする」、大阪地検の刑事処分について「官邸も早くということで、法務省に何度も巻きを入れている」などの記載があった。事実なら、見過ごせない大問題だ。

 集中審議で石井国土交通相は、指摘から既に1週間がたっているというのに「出所不明で、体裁も行政文書とは思えない」などと答えるだけで、文書が本物かどうかの調査を確約することすらも避けた。首相がしばしば口にする「ウミを出す覚悟」はどこに行ったのか。

 一方で、きょうにも参院厚生労働委員会で与党が採決を強行しようとしている働き方改革法案について、首相は「多様で柔軟な労働制度へと抜本的に改革する70年ぶりの大改革」と自賛した。長時間労働を招かないか、高度プロフェッショナル制度の妥当性が問われていることなど、全く眼中にないようだ。

 政権・与党は、数々の問題点が指摘される「カジノ法案」や、与党の党利党略もあらわな参院選挙制度改革法案も、会期内に成立させる構えをみせる。

 熟議を通じ国民の懸念に応える。法案に問題があれば立ち止まり、必要なら修正を施す。それが会期を延長した政権・与党の責任だ。

「「差別と決別を」朝鮮学校巡る懲戒請求受けた弁護士投稿」

f:id:amamu:20051228113104j:plain

 以下、朝日新聞デジタル版(2018年6月26日12時18分)から。

 朝鮮学校への補助金交付を求める声明などを出した各地の弁護士会懲戒請求が殺到した問題で、当事者の弁護士の一人が、謝罪文を送ってきた請求者への返信をフェイスブックに公開している。「あなたがすべきことは私への謝罪でなく、差別を楽しむこととの決別だ」とつづった内容はSNS上で拡散した。

 書いたのは札幌弁護士会所属の池田賢太弁護士(34)。池田さん自身も960人から請求を受けた。懲戒事由として、日本弁護士連合会(日弁連)が2016年7月に出した朝鮮学校補助金停止に反対する会長声明に賛同したことが、「確信的犯罪行為」に当たるなどとされていた。

 日弁連のまとめでは、昨年1年間の懲戒請求受理件数は例年の数十倍の13万件。ネット上に請求を呼びかけるブログがあり、請求書のひな型も載っている。

 請求を受けた弁護士の間で請求者に損害賠償を求める動きが始まると、池田さんに6人の請求者から謝罪文が届いた。

 池田さんは返信を書き、5月18日に自身のフェイスブックに内容を公開した。

 「社会は一人ひとりが平等という価値観で成立している。あなたの懲戒請求在日朝鮮人の権利の平等性を認めず、社会の前提を壊している」と指摘。「私の経済的損害や精神的苦痛よりも、この社会の分断を生じさせたことは、極めて重大で、その責任の重大性をしっかりと認識して」と結んだ。目にした人がツイッターで紹介するなどして、SNS上で拡散した。

 その後、2人からは再度、池田さんに手紙が届き、「自分の人権意識が薄かったことを反省している」などとつづられていたという。

 池田さんは「ブログにあおられて大量の懲戒請求という行動につながったことが恐ろしい。関東大震災で流言が広がり、朝鮮人虐殺が起きた事態とどう違うのかという問題意識があった」と話している。(黄茢)
池田弁護士が請求者に宛てた手紙(抜粋)

 私たちの社会は、私たち一人ひとりが、その本質において平等であるという価値観に基づいて成立しています。出自がなんであろうと、障害を負っていようと、職業がなんであろうと、男であろうと女であろうと、その本質において平等でなければなりません。

 私が本当に憤っているのは、貴殿のした懲戒請求が、在日朝鮮人あるいはその子どもたちの権利の平等性を認めていないという点にあります。個人はその本質において平等だというこの社会の前提を壊していることに対する無自覚さです。

 私は、貴殿が今回の懲戒請求をなさった根底には、差別に対する無自覚性があると思わざるを得ないのです。

 そうであれば、貴殿がなすべきことは、私や弁護士会に対する謝罪ではなく、貴殿の心の中にある明確に存在する差別をする心と向き合うことであり、差別を楽しむこととの訣別(けつべつ)です。謝罪すべきは、貴殿の懲戒請求によって在日朝鮮人の子として生まれたがために学ぶ権利を否定された子どもたちにであり、それを自らの責任と追い詰めている彼らの親たちにです。

 私は、貴殿がどのような思想を持とうと、表現活動をされようと自由だと思います。しかし、その自由には責任が伴うことを忘れてはなりません。その自由を行使した結果、他人の権利を害することは許されるべきことではありません。そして、私の経済的損害や精神的苦痛よりも、この社会の分断を生じさせたことは、極めて重大で、それに対する大きな責任は負うべきだと考えます。その責任の重大性をしっかりと認識していただきたく存じます。

(黄茢)