【衆院補選】自民全敗という惨敗結果

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 昨日おこなわれた衆議院議員補欠選挙の結果を見た。印象的なものに過ぎないがいくつか感じたことを書く。

 第一に、自民党惨敗を指摘できるだろう。

 自民党は、島根1区こそ、候補者を立てたが、東京15区も長崎3区も候補者を立てることができなかった。言うまでもなく、裏金問題や金権腐敗自民党政治に対して国民にたいして説明責任を果たし、問題解決に挑戦できておらず、自民党の看板で選挙戦を勝利する自信がもてなかったからであろう。その結果として、島根1区にかろうじて候補者を立てたものの、東京15区も長崎3区も候補者を立てることすらできなかった。これでは政権与党失格と指摘されても反論すらできないだろう。

 補選3つで、2つの選挙区で候補者を立てることができず、立てた選挙区でも、2万4千票余り(17.64%)の差をつけられて負けたとなれば、これは自民党惨敗と言われても仕方あるまい。島根1区は、故細田博之氏の連続当選9回という自民党の牙城であるから、その意味でも、自民党惨敗と言っても過言ではない*1

 第二に、その投票率の低さである。こうした政治不信の責任が自民党公明党の悪政とその反省の無さにあることは言うまでもない*2

 最も高い投票率の島根1区の54.62%ですら、2021年の前回の衆議院選挙の61.23%よりも、6.61%低い。東京15区は、40.70%と、前5回の選挙の最低の55.59%をさらに14%以上も低まった。長崎3区の投票率は、35.45%で、長崎県内の国政選挙で過去最低を記録した*3

 繰り返しになるが、こうした低投票率の責任は、政権与党の悪政と反省の無さにある*4

 第三に、そうした中にあって、金権悪政・不祥事・スキャンダル・人権侵害・腐敗・汚濁、にもかかわらず、振り返って向き合うことすらしない無反省に国民はうんざりしきっている、また、そうした中にあっても、まともな政治を求める有権者の確固たるコア的存在が示された点も指摘しないわけにはいかない。

 政治不信が渦巻き、無関心・閉塞感が広がる中、今回の補選では、まさに低投票率のなか、国民のためのまともな政治を求める有権者の存在が、選挙結果に反映したと考えられる。ひとことでいえば、真の、市民と野党の共闘である。立憲民主党候補者全勝はその結果に過ぎない。勝利したのは市民と野党の共闘であるというほかない。

 日本政治の劣化はアベ・スガ政権の頃より、ますますひどくなり、岸田政権でその定向進化はさらに悪化しているように見える。これが一部識者の見方ではなく、国民大多数の見方になってきているのは、問題の「見える化」が国民に広く誰の眼にも明らかとなってきており*5、にもかかわらず、変革の兆しを自公政権が打ち出しえず、さらにその補完勢力に対する幻想も萎み、ますます悪化していく予測しかもちえなくなっているからだろう。これでは、みずからのいわば抵抗権・革命権*6を行使するほかない。

 島根1区でいえば、本来なら、故細田博之氏の弔い合戦ということで、自民党に有利にはたらくところが、故細田氏の不祥事であるセクハラ疑惑や統一協会との関係、そして裏金問題が誰の眼にも明らかとなり、おそらくそうした批判の受け皿として、地元の名士でもある立憲民主党女性候補者に投票しやすかったことも手伝って、当選となった。

 長崎3区では、自民党支持者の投票行動は2分割し、その半分以上が立憲民主党の候補者に投票したと報道されている。

 立候補者が乱立した東京15区でも、自民党支持者の投票行動は、分裂・分散し、立憲民主党の候補者にも投票行動が流れたと報道されている。

 自民党と同様に、維新の会の候補者が、東京15区では第3位、長崎3区の立憲候補者との一騎打ちでも3割の得票しか取れず、それぞれ惨敗したのは、メタンガスのガス爆発が起きてもはや安全・安心ともいえない大坂万博の、IRがらみの税金の無駄遣いという問題が明るみになっていることと無関係ではあるまい。

 さらに、乙武洋匡氏が11.51%の得票率で第5位に沈んだのは、候補者本人の女性スキャンダルはもとより小池都知事のカイロ大主席卒という学歴詐称疑惑スキャンダルと、さらに都民ファースト人気の陰りと無関係ではないと考えられる。小池百合子の大惨敗と言えよう。

 

 さて、自民党・維新・小池百合子氏、(そして連合)の惨敗となった今回の補選の結果を受けての政局はさらに流動的になるであろう。

 それでも、いくつか指摘しておきたいことがある。簡単に述べるならば、以下の五点になる。

 第一に、岸田政権、そして自民党、さらに自公政権は、今回の選挙結果を受け、打つ手なしの手詰まり感があり、自公政権の終わりの始まりになる可能性があること。

 第二に、立憲民主党が勝利したというより、野党共闘が勝利したということ。

 第三に、さらに日本維新の会や国民民主党、そして小池百合子氏など、今回の野党共闘に参加しなかった自民党補完勢力ともいうべき政治勢力に野党の資格が全くないこと。

 第四に、今回の一連の裏金問題を振り返るならば、しんぶん赤旗報道と、政治とカネの闇を追求してきた上脇博之(ひろし)神戸学院大学教授の告発に端を発している経過は明らかであり、たとえば麻生太郎氏のような「立憲共産党」という物言いが国民を脅しにかかる脅迫的な危険な言葉であることが理解できるだろう*7。真の、市民と野党の共闘をすすめるために、たとえば、「立憲共産党」という悪罵にたいしても、その「再定義」(reclaiming)と「再適用」(reappropriation)が求められている*8

 第五に、立憲民主党にたいして、連合など、真の野党でも真の労働組合でもない、さらなる右の揺さぶりと立憲民主党内部の権力闘争が予想されるが、国民の真の要求に沿った市民と野党の真の共闘がめざされなければならない。

 さて今年に入って、以下のような記事を書いた。

amamu.hatenablog.com

 以上、あえて言うまでもないことばかりかもしれないが、今回の選挙結果を受けての第一印象である。

*1:「島根は47都道府県のうち、衆院総選挙の小選挙区で過去に1議席も落としていない、ただ一つの県だ。補選とはいえ、最強の王国での敗北は、党内に衝撃を与えている。」(4月28日付朝日新聞

*2:今回の衆院補選で公明党がどのように動いたのか、詳報が待たれる。

*3:期日前投票有権者比は、おおよそ島根1区で24%。東京15区で13%。長崎3区で15%。

*4:当選者の得票数は新聞報道でわかるが、各選挙区における当選者の有権者総数比の得票率がすぐに見当たらない。調べてみると、やはり、ほとんど報道がない。Bingでもウソの数字が出てくる。各選挙区の選管の広報もわかりづらい。仕方がないので、各選挙区の選管による当日の有権者総数を調べ、得票数÷有権者総数×100でパーセントを出してみた。東京13区の当選者が11.498%。島根1区の当選者が31.659%。長崎3区の当選者が22.986%だった。もちろん、東京は候補者が乱立していたこと。島根と長崎は一騎打ちであった要因があるが、低投票率が関係している点は否めない。民主主義として問題である。と同時に、政権交代の課題は実現可能な課題と理解できる。

*5:この点では、もはやジャーナリズムとはいえないマスコミの堕落とは対照的にあかはた報道や文春砲、東京新聞などの地方紙、良心的ジャーナリスト、デモクラシータイムス・アークタイムス・一月万冊など一部YouTuberの仕事が光っている。

*6:革命権については、有権者は参院選の投票に行こう - amamuの日記を参照のこと。

*7:たとえば、60年代のアメリカ合州国で、blackの定義として、dirty や not pureを定義にあげている辞書を嘘だといい、逆に、Black is Beautifulと「再定義」した運動はそうした一例。「再適用」の例としては、たとえば、LGBTQでqueer を「再適用」した例がそうした例に当たるだろう。

*8:一言で簡単にいうならば、市民が「反共」という悪罵・攻撃に影響を受けない政治的教養を身に着けるということだ。