モーテルの漢字変換のできないマシンでメールを書く

 夕食を済ませ、宿に帰ってメールを出すことにしよう。
 通常のインターネットカフェには、パソコンがたくさん置いてある。たとえそのパソコンで日本語が使えなかったとしても、自分で勝手に設定できるし、また本当に困ったら管理者がいる。中には店番だけのような管理者もいるのだけれど、人間相手なら文句も言える。どうしてもダメなら、マシンを変えてもらったり、どうしても使えなかったらキャンセルだってできる。ところが、こうしたモーテルにある機械というのは、ひと昔前の日本の喫茶店に置いてあったような、例えて言えばインベーダーゲームが組み込まれているガラス張りのテーブルタイプのようなものが一台あるだけである。これでパソコン本体には直接触れさせず、コイン投下によって客にインターネットをさせるのである。もっともインターネットなので、ディスプレイは見やすいように斜めに設定してある。これが空港だとかバーだとか、管理人がいない場所に置いてある。マシンだけを置くことによって、日銭を稼ごうという魂胆がみえみえなのである。だから、壊れたときなんて融通がきかないし、たとえ壊れなくたって柔軟な対応をしてもらえない。このモーテルに置かれているインターネットマシンにも、管理人を置けないし、置きたくもないので、そうしたタイプの一台になっている。
 このマシンが置いてある場所がテレビラウンジと共有になっていて、たいてい若者たちが部屋を暗くして静かにテレビを見ている。各部屋にもテレビはあるのだが、ここのテレビが大型なのである。真っ暗な中だし、漢字変換が使えないのだけれど、それでもこのインターネットマシンがあるおかげで、メールが読めて書ける。全く使えないより数段マシである。