応用言語学の課題文献を読まずに書いたので課題の書き直し

ワイカト大学図書館

 応用言語学の課題は月曜日に提出したのだが、課題文献を読んで課題を書かないといけないところを、課題文献が全て入ったCD-ROMが手に入らないことをいいことに、私は自分の文法論を勝手に書いて提出していた。
 担当教授に呼ばれて話し合いをしないといけなくなったのだが、呼ばれた彼の大学の個室の部屋には、家族の写真が壁に飾ってあった。
 コミュニカティブアプローチの場合、文法の指導はなるべく避けて、必要に応じて最小限度の説明に留める文法指導のアプローチがある。またその一方、文法をきちんと教えることを課題とする文法指導のアプローチがある。あなたの場合、そのどちらの立場を取るのかというのが実は課題だったのだが、「どう考えますか」と質問されて、私は担当教授に次のように話した。
 日本の外国語教育の状況は、ESL第二言語教育)というよりも、EFL(外国語教育)と呼ぶべき状況が支配的である。言語的にいって、日本は孤立化している。だからコミュニカティブアプローチを取るべきだと言われても、私には基本的にピンとこない。また、私の勤務する高校は、大学の付属校なので、コミュニカティブアプローチで多少話ができるようにするという目標よりも、アカデミックスキルを身につけさせる方が、より重要に思われ、学生は基本的にイギリス語を読んだり、書いたり、思考力を養うことが期待されている。だから、どちらかといえば、コミュニカティブアプローチのための最低限の文法というよりも、もちろん文法のための文法になってはいけないけれど、文法をきちんと教えることがより重要だと考えている*1
 以上のようなことを短めに話すと、日本で3ヶ月ほど客員教授として、東京のある女子大で教えたこともあるこの応用言語学の教授は、「日本でという条件なら、私もそう思う」と私の意見に賛成してくれた。
 それで、「課題の再提出はどうしますか」と言われるので、「今晩にでも早急に書き上げて、メールで送ります」と言うと、「学生の書いた課題をすでに読み始めているが、日曜日には終えるつもりで、日曜日に大半を読むつもりだから、土曜日までに送ってくれればいい」と言われた。さらに、コミュニカティブアプローチに対する、ある日本人教員が書いた論文を手渡され、ある紙面に発行される予定なのだけれど、面白いから読んでみなさいと言われた。
 「ところで、日本語で、here, thereって、どう言うの」と、パソコンを立ち上げながら、唐突に質問された。どうやら、いつもこの教授が授業で使ってるパワーポイントのプレゼンテーションの範例に使うらしい。応用言語学の彼の授業の場合、中国語の場合、日本語の場合、ドイツ語の場合、アラビア語の場合と、結構いろいろな例が出されて面白い。
 here, there なら、「こちら」「あちら」だろうか、丁寧な言い方でないなら、「こっち」「あっち」とも言うな。「ここ」「あそこ」かな。いや、「自分の守備範囲」と「相手の守備範囲」という視点に立つなら、「こちら」「そちら」かもしれないぞ。さらに「こちら」「そちら」なら、人称代名詞のようにも使うかもしれない。たしか「こ」「そ」「あ」「ど」というから、「こっち」「そっち」「あっち」「どっち」か。
 応用言語学の担当教授は、イギリス語には、here, thereしかないけれど、日本語には、第三番目の場所があるのだろうと言う。somewhereで「どこかに」ということを言っているのだろうか。
 明日は特別レクチャーとして、マオリ語を研究対象としている教授が、ここ数十年のマオリ語の発音の変化について話をすることになっている。私には提出しないといけない課題がたまってきているので暇ではないのだが、これは興味があるので、聞きに行く予定である。
 「明日は来るの」と聞かれたので、「行きます」と答えると、「それじゃ、また明日」とこの応用言語学の担当教授に挨拶をして、私たちは別れた。

*1:コミュニカティブアプローチに対する基本的な私の立場は、12月10日のブログを参照のこと。http://d.hatena.ne.jp/amamu/20041210