バスビー邸を訪れる

 広場前のバスビー邸(Treaty House)を見学する。
 みやげ物屋では、クローディア=オレンジ氏の本が置いてある。
 女性店員と話をして、本を何冊か買った。
 このマオリの店員さんは、マオリで英語を話さない人はいない。マオリは英語化し、すでに都市化して、寄って立つ文化をもたないと言った。私にはとてもそうとは思えないが、おそらく、この店員さん自身が、そう思っているし、そう思いながら生活をしているから、そう言うのだろうと思った。
 それにしても、生きていくためだとはいえ、この店員さんも含めて、マオリは英語がうまい。マオリ語を流暢に話す層は、マオリの大体5%と言われている。すでに英語が主流なのだ。だから、その上で、マオリ語を話そうとしている自覚的な運動があるのだ。
 だからもちろん、マオリ語に興味を示さないマオリはいる。これは、状況は全く違うのだけれど、英語を十分に話せないのに、日本語を捨てて、英語を話せばいいと言っている日本人の論者とは違うが、母語を大事にする思想が、どちらの立場にも欠けているという意味で私には、同じようにも聞える。
 つまり、英語も話せないのに日本で英語・英語と崇めたてる馬鹿らしさと、英語だけでいいやと諦めるアオテアロアマオリの浅はかさといったところだろうか。