本作では、最後の場面の、鈴木一之助会長の退任メッセージがいい。
役員報酬減額*1について役員会で話をする鈴木一之助の場面で、三國連太郎の「続けて」という鈴木会長がなんともいい。
あの口調は、私が世話になり大いに尊敬する大学時代のゼミの先生と同じ口調に聞こえてしまう。
「釣りバカ日誌」の18、19、20は、すべて、スピーチがでてくるが、これらスピーチの場面は必見である。
また、原常務(岸部一徳)がいい。浜ちゃんとのやりとり、とくに父親の「上から眼線」との浜ちゃんの指摘。続けて、赤穂浪士の討ち入りの際、討ち入りに参加しなかった浪人の気持ちを考えろたらどうかという浜ちゃんのコペルニクス的講義。そして、それに対するお礼として原常務(岸部)の情報リークの場面がすばらしい。俺も、大学時代以来、こう見るべきだという、ああした講義と議論をたくさん受けてきた。大学の講義より、むしろ恩師や仲間から教わることのほうが多かった。
営業も、所詮、人がやっていることだ。不正はいけないが、人がやっているということに注目することは、重要なことだ。
浜ちゃんが大きな仕事をとって、会社から、金一封もふくめて、評価される。
ご褒美に食事は何がいいかと聞かれたとき、何が昼間から紹興酒だという役員の切り返しに対して、「じゃ、ビールにする」というハマちゃんには抱腹絶倒だ。
人間、なんといってもユーモアが大切だ。
北海道の釣りの場面*2は美しい。
北海道の渓流釣りは、アオテアロア・ニュージーランドを思い出させてくれる。
久保俊介役の塚本高史が健闘している。
久保俊介とともに行く浜ちゃんのカヌー。北海道のカヌーはいい。
夕暮れ時の、イトウとのファイトもいい。
三國連太郎・西田敏行は、実にうまい俳優だと思う。
とくに三國連太郎扮する鈴木一之助は、漫画のキャラクターのルックスは違っているが、なんとも、はまり役だと思う。
同棲が話題になったとき、鈴木一之助が情報提供して、なんとか和解につながるところは、人というものは、いろいろな人の世話になっているということが、ともすると自覚されないということを、的確に表現している。
本作品も深い作品。朝原雄三監督*3の力量か。
三途の川。六文銭。賽の河原。この辺も、笑いに変えるところが、すごい。
黒澤明の「夢」のようだ。
生き返ったスーさんについて報告するスーさん夫人の奈良岡朋子の演技が胸に迫る。
そして、会長退任のご挨拶。
スーさんの「会社」論は、役員にとっては耳の痛い話だろう。長嶋茂雄の「巨人軍は不滅だ」にならって、スーさんが「鈴木建設は永久に不滅です」との退任挨拶をおこなう。
「不滅」のために、何が必要なのだろうか。持続可能性のために、何が必要なのだろうか。
2009年公開。