以下、朝日新聞デジタル版(2018年4月15日07時03分)から。
米国のトランプ政権が再び、シリアへの攻撃に踏み切った。故郷に残した家族や、生まれ育った街はどうなるのか……。国内のシリア人や支援にあたってきた人たちに、怒りや落胆の声が広がった。
「米国の攻撃も許せないが、アサド政権も許せない。一番かわいそうなのは、市民だ」。東京都内でアラビア料理のレストランを営むシリア人のアルクド・イブラヒムさん(46)は憤った。
かつて都内の別の場所でレストランを開いていたイブラヒムさんは、2011年にシリアに帰国した。しかし、その直後に内戦が激化。トルコに避難した後、再び来日。現地では兄や友人が暮らす。内戦で知人や子どもたちが亡くなるのを見てきたといい、「もう一度、平和な国に戻ってほしい」と期待を込めた。
東京都渋谷区の「アップリンク」では14日から、シリアでの市民メディアの苦闘を伝えるドキュメンタリー映画の上映が始まった。上映後のトークイベントに参加した都内在住のシリア人ジャーナリスト、ナジーブ・エルカシュさん(44)は「(今回の攻撃は)シリアが抱える問題の根本的な解決にはつながらない。対立をあおらず、冷静な対応をして」と語った。
トークショーでは観客から「現状を知りたい」との質問が相次いだ。「シリアは複雑な問題を抱えている。日頃から、関心を持ってもらいたい」
イラクでシリア難民の教育支援にあたる認定NPO法人「IVY(アイビー)」(山形市)は昨年、7千着のコートを現地の難民キャンプに届けた。枝松直樹代表理事は「暴力の連鎖は問題の解決にはならないのに」と肩を落とす。「避難民が新たにうまれることになる。私らの活動は何なのか、限界、無力感を感じてしまう」
トルコでシリア難民の支援などを続ける国際NGO「難民を助ける会(AAR Japan)」の名取郁子支援事業部長も「市民が巻き込まれてしまわないか心配だ」と不安視しつつ、「新たな武力攻撃が終結を早めるとは思えない。国連安全保障理事会など政治の場で、話し合いで解決してもらいたい」と訴えた。