陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の陸上自衛隊新屋(あらや)演習場(秋田市)への配備計画で、岩屋毅防衛相は14日、津波対策の必要性を認めた。地元への報告書では津波の影響は「ない」としており、説明を一転させた形だ。地図データの縮尺を誤る記載に続き、新屋演習場を「適地」とした根拠が揺らいでいる。

 防衛省が5月27日に秋田県秋田市に提出した調査報告書は、配備候補地について、日本海側にあり面積が約1平方キロメートル以上で、平らな敷地を確保できる場所とした。新屋演習場を含め、青森、秋田、山形3県の国有地や自衛隊演習場計20カ所をリストアップ。レーダーが弾道ミサイルの探知や追尾をする際に支障が出る山がないこと、電気や水道などのインフラ、津波の影響など5項目を検討した。

 報告書に掲載された検討結果の一覧表には、津波の影響について4カ所が津波の影響が「有り」、4カ所が「大きい」とされた。新屋演習場は空欄で、影響はないとされた。他の項目と合わせ、20カ所の中で新屋演習場を唯一の「適地」とする判断の根拠になった。

揺らぐ「適地」報告書の信頼性

 しかし、岩屋氏は14日、閣議後の記者会見で、秋田県が公表している津波浸水想定に言及。「新屋演習場の大部分の敷地は浸水しない想定だ」としつつも、「(日本海に近い)西側の敷地境界のみ、浸水域の範囲に含まれる」と認めた。

 防衛省によると、イージス・アショアのレーダーやミサイル発射装置を置く予定の敷地部分が、2~5メートルの浸水域にあるという。岩屋氏は、敷地造成をしてかさ上げすれば「津波の影響を受けずに配置することが可能だ」と説明。「新屋演習場が適地であるとの考え方に変わりがあるわけではない」と強調した。

 報告書は、新屋演習場で津波対策のための敷地造成が必要になることは全く触れていない。岩屋氏はその理由について、「敷地造成を行う前提でいけば津波の心配は回避できるという考え方で記載しなかったのではないか」と釈明した。

 

(後略)

(山下龍一、寺本大蔵)