「萩生田氏「憲法審査促すのも議長の仕事」 不満にじませ」

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以下、朝日新聞デジタル版(2019年7月29日20時16分)から。

 自民党萩生田光一幹事長代行がインターネット番組で、憲法改正の議論加速を図る「憲法改正シフト」の布陣を敷く文脈で大島理森衆院議長の交代論に言及した。参院選後、改憲議論の加速でアクセルを踏んでいる安倍晋三首相の側近による発言だけに、与野党に波紋が広がっている。

 発言は26日夜、改憲論議における衆院議長の役回りの重要性について、出演者のジャーナリストから問われた際に出た。萩生田氏は「憲法改正をするのは総理ではなく国会で、最終責任者は総理ではなく議長」と主張。大島氏について「立派な方だが、どちらかというと調整型。議長は野党に気を使うべき立場だが、気を使いながら(憲法審査会の)審査はやってもらうように促すのも議長の仕事だったと思う」と述べ、不満をにじませた。

 「三権の長」である衆院議長は第1党から選出されるのが慣例で、与野党を超えた公正な運営をするために所属会派を離脱して就任する。国会法は「議院の秩序を保持し、議事を整理し、議院の事務を監督し、議院を代表する」と定め、本会議の議事進行などを行うが、憲法審査会のような個別の委員会や審査会の運営に直接関与することはほとんどない。

 大島氏の任期は衆院議員と同じ21年までで、衆院が解散されるまで務めるのが慣例。過去に任期途中で交代したのは、平成以降では2例しかなく、1989年に予算案を自民党が単独採決した本会議開会の責任を問われて辞任に追い込まれた原健三郎氏と、体調不良を理由に辞任した町村信孝氏のケースだけだ。安倍首相が9月前半に実施を調整している内閣改造自民党役員人事に伴う衆院議長交代が想定されていたわけでもなかった。

 ところが、萩生田氏の発言は、こうした慣例や「常識」を覆してでも改憲議論を加速させるには、「今のメンバーでなかなか動かないとすれば、有力な方を議長において憲法改正シフトを国会が行っていくのは極めて大事だ」と踏み込んだ。萩生田氏は首相側近で、官邸の意向とも受け取られかねないだけに、政権は火消しに回っている。

 菅義偉官房長官は29日の記者会見で「報道は承知しているが政府としてコメントは控えたい」とした。政権幹部は「本当にそんなことを言ったのか。大島さんには感謝している」と官邸の意向による大島氏の交代論を否定。別の幹部も「議長の人事に口を出すなど処分ものだ」と怒りをあらわにした。

 自民党高市早苗衆院議院運営委員長は29日、国会内で「萩生田さんが議長を交代できるわけではない」と指摘。憲法改正を進めるために議長を交代させるという考えにも「賛同できるものではない。議長は憲法審のことだけをやっているわけではなく、衆院全体の運営に責任を持つ方だ」と述べた。この日、自民党参院議員会長に選出された関口昌一氏は会見で「私だったら、同じような発言はしない」と話した。

 共産党小池晃書記局長は東京都内で記者団に「言語道断。議会制民主主義の根本をひっくり返すような発言だ」と反発した。(大久保貴裕)