「台風19号、なぜ関東直撃?上陸までの「驚くべき経過」」

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以下、朝日新聞デジタル版(2019年10月13日4時50分)から。

 大型で強い勢力を保ったまま上陸した台風19号は、東海、関東地方を中心に激しい雨を長時間降らせ、河川の氾濫(はんらん)や、土砂災害など広範囲に大きな傷痕を残した。


 大雨特別警報が出た12都県では、台風19号本体が上陸する前から活発な雨雲が断続的に生じ、広範囲で強い雨が降り続けた。各地で観測記録を塗り替えるような大雨になった。

 12日午後に会見した気象庁の梶原靖司予報課長は、今回の特徴について「台風の中心の北側に非常に発達した広い雨雲があり、記録的大雨となった」と説明した。台風接近、上陸に伴い、東や南東からの暖かく湿った風が関東の秩父、丹沢や静岡の伊豆半島、東北南部など山々にぶつかることで上昇気流が生じ、広い範囲で雨雲が次々と発生したという。

 そもそも、記録的な大雨を降らせたのは、台風が大型で非常に強い勢力を保って本州に接近したからだ。

 名古屋大の坪木和久教授(気象学)は、台風19号の発生から発達、接近までは「驚くべき経過をたどった」と話す。まず発生直後、中心気圧が1日で急速に低下。非常に大きな雲のまとまりができた。海水温や大気の対流などの条件によるもので、これが大きさに影響した。コンパクトながら千葉県に大きな被害を与えた台風15号とは、この最初の段階が大きく違うという。

 その後、北上しても中心気圧が低く、勢力を保ったままだった。日本のすぐ南の海水温が27度以上で平年より1~2度高く、エネルギー源となる水蒸気を多く取り込んだからだ。「10月になると、通常は北西から乾いた空気が入り込んで台風の水蒸気を奪い、列島に近づけば雲の密度は下がる。今回は、しっかりした雨雲を持ったまま台風が接近した」と指摘する。

 強風域が本州の半分以上を覆うほど大型で、勢力も強かったため、大雨に加えて暴風、さらに高潮といったあらゆる現象を伴ったとみられる。

 なぜ関東地方を直撃したのか。気象庁によると、太平洋高気圧が例年より強く張り出しており、その縁を回るように北上した後、偏西風の影響で東に進路を変えたためという。坪木さんは「10月に上陸すること自体は過去にもある。今回は関東で、過去最強クラスの台風だったことが特別だ」と語る。(桑原紀彦、小林舞子)