「くつろぐ首相動画、波紋 星野源さんの曲に合わせ投稿 「政治利用」「感覚にズレ」…賛意も」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2020年4月14日 5時00分)から。

 

 


 (前略)


 新型コロナウイルスの感染拡大で政府が外出自粛を呼びかける中、安倍晋三首相が首相官邸のインスタグラムなどに投稿した動画が波紋を広げている。ミュージシャンの星野源さんの楽曲に合わせ、自宅でくつろぐ様子を撮影したものだが、ネット上では投稿直後から「政治利用だ」などと批判が殺到。与党からも苦言が相次いでいる。

 「ツイッターでは過去最高の35万を超える『いいね』をいただくなど多くの反響がある」
 菅義偉官房長官は13日の記者会見で、首相の動画についてこう強調した。20代を中心に若い世代の感染拡大が広がっていることを挙げ「若者に外出を控えてもらいたい旨を訴えるにあたり、SNSでの発信は極めて有効だ」とも語った。
 首相は12日、星野さんの楽曲「うちで踊ろう」の動画に合わせ、東京・富ケ谷の自宅で愛犬を抱いたり、読書をしたりしてくつろぐ様子を首相官邸のインスタグラムや自身のツイッターなどに投稿。インスタグラムには「友達と会えない。飲み会もできない。ただ、皆さんのこうした行動によって、多くの命が確実に救われています」とのメッセージも添えた。
 この投稿にSNS上で批判が相次いだ。「外出自粛のメッセージが伝わった」などの賛意もあったものの、「総理がすべきことは、自分が自宅で優雅にくつろぐビデオを見せることではない」「政治利用するな」など厳しい投稿が続いた。
 動画は11日、首相の自宅で撮影された。政府関係者によると、「うちで踊ろう」が話題になっていることを受け、首相の姿を投稿しようというアイデアが官邸内から出たのだという。
 その動画に、与党内からも批判が噴き出している。自民党参院幹部は「店を閉めなきゃいけない状況の人と感覚がズレている」と突き放した。
 「うちで踊ろう」は、星野さんが自身のインスタグラムでセッションを呼びかけた楽曲。外出を控える動きが広がる中、著名人が星野さんに合わせて歌ったり、踊ったりする動画を相次ぎSNSに発信するなど話題になっている。星野さんはその後、インスタグラムに「ひとつだけ。安倍晋三さんが上げられた“うちで踊ろう”の動画ですが、これまで様々な動画をアップして下さっている沢山(たくさん)の皆さんと同じ様に、僕自身にも所属事務所にも事前連絡や確認は、事後も含めて一切ありません」と投稿した。
 首相の対応がSNSなどで「炎上」したのは、これが初めてではない。
 首相が突如表明した布マスク2枚の国民全世帯への配布では、費用対効果を含めて疑問の声が上がった。マスクの供給不足を補うために官邸官僚が発案したものだった。官邸のこうした対応について、自民党内からは「官邸はどうしてしまったのか」(幹部)と心配する声も漏れる。
 「宣伝会議」元編集長の田中里沙事業構想大学院大学長は、「首相の動画は、同じ一人の国民として外出自粛に参加する姿勢を評価した人が多数いた一方、補償など首相の公的な言動を求めている人々もおり、その温度差が顕在化した」と分析。政治学者の中野晃一・上智大教授は、「自分がくつろぐ前に、ほかの人が家にいられるように努力しているのか。きちんとした『コラボ』もせずに音楽をBGMとして雑に使い、『ふつうのおじさん』のような様子でくつろいでいることが首相としての責任を放棄していると受け止められた」と語る。(菊地直己、宮田裕介)