「河井夫妻、地元議員らに計700万円超持参 参院選前に」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2020年5月18日 5時00分)から。

 自民党河井案里参院議員(46)=広島選挙区=が初当選した昨年7月の参院選前に、夫で同党衆院議員の克行前法相(57)=広島3区=と案里氏らが少なくとも計30人の地元議員や陣営関係者らに対し、合計で700万円を超す現金を持参していたことが朝日新聞の取材でわかった。地元議員や関係者らが証言した。検察当局は票の取りまとめを依頼する目的だった疑いがあるとみて、公職選挙法違反(買収)容疑での立件に向けて捜査している。
 朝日新聞は現金を持参したかどうかや趣旨について夫妻の事務所にファクスを送るなどして尋ねたが、17日夕までに回答はなかった。関係者によると、検察当局による複数回の任意聴取に対し、夫妻は買収行為を否定しているという。
 地元議員や関係者の証言をまとめると、夫妻らが現金を持参してきたと認めたのは県議9人、市議10人、町議1人、元県議1人、首長2人、後援会関係者4人、陣営関係者3人の計30人。いずれも案里氏の選挙区内で活動し、現職議員は全員自民系だった。30人のうち一部は受け取りを拒んだり、返したりしていた。

現金持参の構図
 金額は1人につき5万~60万円で、そのうち4割が30万円で最も多かった。領収書のやりとりはなかった。30人中28人には案里氏の選挙活動を統括したとされる克行氏が持参し、残りは案里氏か、案里氏と訪れた現職県議が渡していた。
 持参時期は、案里氏が立候補を表明した昨年3月から7月までの間。広島県内では昨年4月、県議選のほか5市3町で統一地方選があり、名目は「陣中見舞い」や「当選祝い」などだったが、複数の議員らは取材に「参院選があるので案里氏を応援してほしい、との趣旨だと思った」と証言した。
 関係者によると、陣営幹部では、車上運動員に違法な報酬を支払ったとされる公選法違反事件で起訴された案里氏の公設秘書・立道浩被告(54)に30万円、逮捕後に処分保留となった事務長(71)にも60万円を渡していた。
 首長では、入山欣郎(よしろう)・大竹市長は克行氏から封筒を差し出されたが、中身が現金と思い受け取らなかったという。小坂真治・安芸太田町長は20万円を受領したと認め、先月辞職した。
 昨年の参院選広島選挙区(改選数2)では、自民党県連は現職の溝手顕正氏への一本化を望んだが、2議席独占を狙った党本部が案里氏を追加公認。同党関係者によると、党本部から4月以降、夫妻が代表を務める政党支部に計1億5千万円が提供されていた。落選した溝手氏が受け取った額の10倍だったという。
 広島地検は車上運動員への違法報酬事件の捜査過程で、夫妻らが広範囲に現金を配っていた疑惑を把握。東京地検特捜部の応援も得て県議会の議員控室などを家宅捜索し、夫妻の行為が買収にあたるとみて調べている。朝日新聞に証言した地元議員らも、検察当局の任意聴取を受けている。
 違法報酬事件では、公判中の立道被告らに禁錮刑以上(執行猶予を含む)が確定し、裁判所が連座制の適用を認めれば、案里氏の当選が無効になる。克行氏は現在7期目。法務副大臣首相補佐官などを経て昨年9月に法相に就任したが、案里氏陣営の公選法違反疑惑が浮上した同10月に辞任した。