以下、朝日新聞デジタル版(2021/6/21 7:00)から。
学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざん問題で、国が近く、自死した同省近畿財務局職員赤木俊夫さん(当時54)が改ざんの経緯を記したとされる「赤木ファイル」を大阪地裁に提出する。開示を前に妻の雅子さん(50)が取材に応じ、赤木ファイルは「夫がプライドをかけて残したもの」と語った。改ざんをめぐる新たな事実は、明らかになるのか――。
「やってしまったことを、細かく書いて残しているんだ」。雅子さんは2017年7月、俊夫さんから告げられた。18年3月に命を絶つまで、何度も同じようなことを言われた。書き残したものはファイルにとじている、とも聞いた。
「それを残したことはよかったことなの?」
そう尋ねると、俊夫さんはぽつりと漏らした。
「よかったと思う」
俊夫さんの死から3カ月後、財務省は改ざん問題の調査報告書を公表した。報告書には、本省から改ざんを指示された近畿財務局の職員が反発し、改ざんへの強い抵抗感があったと書かれていた。だが、聞き入れられず、改ざんは実行された。具体的なやり取りは記されておらず、雅子さんは「怒りが湧いた」と振り返る。
19年3月、俊夫さんの元上司から、ファイルの存在を明かされた。元上司によると「見てもうたら、どういう過程で(改ざんを)やったかというのが全部分かる」という。国などに損害賠償を求める裁判を進める中、代理人の弁護士が「赤木ファイル」と名付け、開示を求めてきた。
だが、裁判では「訴訟に関係がない」と言われ、国会で野党が追及しても存否の回答すら拒まれた。「こんなに出し渋るのは、ファイルと報告書に違うところがあるのかな」と思った。
一方で「本当にファイルは存在するのか」と不安に押しつぶされそうにもなった。それでも、長年連れ添ってきた俊夫さんの言葉を信じてきた。「夫が残したものは必ずある」
今年5月6日。1年あまり回答を避けてきた国が、対象の文書を特定したとして、ついにファイルの存在を認めた。「あったよ」。その翌日、岡山県にある俊夫さんの墓前に報告した。
開示を前に、俊夫さんが語った「よかった」の意味をかみしめている。改ざんの証拠を残せば、職場や周囲に迷惑をかける可能性もあるが「夫は真実を表に出そうとして『本当のことだから(残して)よかった』と言ったんじゃないか」。それだけに、国には黒塗りをせず、全てを明らかにしてほしいと願っている。
「夫が残したものを、私だけでなく、皆さんに見てほしい。二度と同じようなことが起きないように」(森下裕介)
財務省報告書 多くの疑問
財務省は2018年6月に調査報告書を公表し、14件の決裁文書を改ざんした経緯の一端を示したが、多くの疑問が残っている。(後略)
(米田優人、加藤あず佐)