朝食をいただいて、アイサイトまで車で送ってもらう

 朝食の時間ですと二階に呼ばれる。朝食は、ジェーンが作ってくれる。ビルは隣の居間でTVサッカー観戦に夢中な様子。ジュースにシリアルをいただいて、「卵はどんな風がいいか」というので、サニーサイドアップ(目玉焼き)をお願いする。こちらはイングリッシュブレックファーストである。トーストを食べていると、焼いてくれたばかりの卵料理が出てきた。卵の個数は日本人には取り過ぎの2個だが、黄身の焼き具合が硬からず柔らからず、ちょうどいい具合である。こういう場合は褒めたほうがいいのかなと思い、「卵の焼き具合が、硬すぎず、かといって柔らかすぎず、いいですね」と褒めると、「卵の焼き方は、長いこと修行してきましたから」と、嬉しそうに言った。卵の焼き方で、これはやはり褒めるべき腕前なのだと改めて思った。子どもたちはすでに独立してこの家にはいないようだが、家族のために彼女はずっと卵を焼いてきたのだろう。歴史である。
 二階の窓から見る外の景色は、まさに「陽のあたるネルソン」(Sunny Nelson)である。日光がまぶしい。この辺りはリンゴやナシの果樹園も多いという。
 結婚式の写真や子どもの写真というものは、どこの家庭にも飾ってあるものだが、この家も例外ではなかった。家族の話になり、10代で免許が取れるものだから自動車を買ってとねだる孫がすでにいるという。分別もつかない年齢なのに冗談じゃないわとジェーンが言う。そういえば、ネルソンの町だが、昨晩、若い奴が車に乗って騒いでいたと私が言うと、「それはいつ頃のこと」とジェーンが聞いた。「7時か8時だった」と答えると、隣の部屋でサッカー観戦に夢中の旦那に向かって、「昨晩私たちが帰ってきたのはいつ頃だった」と声をかける。「12時ちょっと前じゃなかったかな」という旦那の返事に、「そんな時間帯に、若い連中がたむろして騒いでいたのよ」と言う。たしかに退屈な田舎町だから、若い連中もそんなことくらいしか刺激がないのかもしれない。昨晩、この夫婦は、どうやら社交ダンスに行ってきたらしい。会場に着いて、「最初少しアルコールを飲んだが、私たち夫婦は大人で分別があるからその後は一切アルコールを飲んでいない。でも、若い人は分別がないから、飲酒運転が多いのよ」とジェーンが言う。
 インフォメーションセンターのことを最近はアイサイト(I-Site)というのだが、ここの奥さんは、最初このコトバを聞いて、eye-sight(視力)だと思ったと笑った。「観光案内所」と「視力」ではえらい違いだから、「最初、何のことやらわからなかった」と眼をぱちくりして言うので、私も大いに笑った。
 さて今日は、モトゥエカに行く日。インフォメーションセンターまでたいした距離ではないが、車で送ってくれるという。昨日は旦那が送ってくれると言っていたが、旦那はサッカー観戦に夢中なので、奥さんの運転で送ってもらうことになった。
車は日本車のマツダで、8年前に1万ドルで買ったという。日本円なら70万円というところか。前にも書いたように、ニュージーランドは日本の中古車市場として有名で、ニュージーランドの中古車の95%が日本車だと聞いている。
 アイサイト(I-Site)まで車で送ってもらって、彼女に礼を言って別れを告げた。