ハミルトンのモーテルでの朝

ハミルトンの空

 朝、サンドイッチをつくって食べていると、一人の男性がキッチンに入ってきた。突然出会ったこともあるだろうが、私の顔を見て相手はかなり驚いたようすだ。ちょっとした「恐怖感」すら感じたようなので、こちらから話しかけてみる。ベイオブアイランズからやって来たらしい。ベイオブアイランズといえば、風光明媚で有名な地域だ。ロトルアで会ったアレックスがやたらと気に入っていたところだ。そんな有名な観光地に住んでいる人が、「なんでまた、なんてことのないミドルタウンのハミルトンにやってきたの」と私が尋ねると、「昨日友人の結婚式だった」とのこと。「そうなの、じゃあ、今日は二日酔いだね」と言うと、「そう、ひどい二日酔いなんだ」と言う。「何を飲んだの」と尋ねると、「ワイルドターキーだ」と彼は答えた。「なんだバーボンじゃないの」と私が言うと、「オーストラリアから持ってくると、無税で安いんだ」と彼は教えてくれた。
 そこへ彼女のシェリル(仮名)が来て、さらに会話が続く。こういうやりとりで、一応のゲームにはなっている。
 英語を母語とする彼らにとって、私が英語を喋るのかどうかわからないので、挨拶しようとすると少し勇気がいるようだ。それでも、そうしたリスクをあえてとる行動派というのか積極派(risk-taker)の方がこちらでは日本より多いように思う。だから、積極的に自分の方から自己紹介をした方がよい。そうすれば、彼らはほっとする。彼らを安心させるためにも、こちらはそちら流のゲームの仕方(常識)がわかっている人間なんだと先に宣誓してやった方がよいのである。こちらから情報を提供する提供者(giver)になれれば、情報を取れる収得者(taker)になることができる。
 それから、英語によるコミュニケーションは、西洋理解や旅行経験があると楽だ。私の場合でいえば、半年いたサンフランシスコをはじめとして、アメリカ合州国の各都市、ハワイ島アイルランドの各都市、オーストラリアのメルボルン、ブリズベン、ゴールドコーストタスマニアホバートニュージーランドクライストチャーチダニーデンと、少ない経験だけれども、それでもあちこち回っていることや西洋の常識を学んできたことが役立っている。コトバの習得は技術の問題もあるけれど、背景的知識や常識を知っていると理解が楽になることが少なくない。