もうひとつ興味深かったのは、日本文化論が専門の中国人女性研究者によるものだ。
日本でも中国でも、ここ数年韓国ドラマが人気だという。日本ならもちろん韓国KBSテレビの「冬のソナタ」とくるところが、中国では、同じ韓国KBSのドラマでも、「明成皇后」(ミヨンソンファンフ)というドラマが人気だという。
明成皇后といってもわからなければ、閔妃(ミンビ)といえば、おわかりになる人もいるだろう。日清戦争後、1895年10月に日本公使らの一団に暗殺された閔妃である*1。
中国では日中韓がからむ近代史を背景にしたドラマが受けているのに、日本で受けるものは純愛ものが大半だ。
この研究者の言葉を借りれば、「「日式韓流」は、歴史を封印した脱却を「無菌空間」で育てられている感さえある」(高媛)ということになる。
日本は、歴史を基礎においた政治意識をつくりあげないと、アジアで友人はつくれず、ますます孤立し、アジア人との交流もコミュニケーションもはかれない。このことは間違いないと断言できる。
*1:「観光コースでない韓国―歩いて見る日韓・歴史の現場」によれば、景福宮の民族博物館横近くに「明成皇后殉国崇墓碑」と「明成皇后遭難の地」の碑があるが、観光客はほとんど訪れない場所であると紹介している。私の持っているものは1994年度版であるが、最近では「観光コースでない韓国―歩いて見る日韓・歴史の現場」が入手可能のようだ。