岡本太郎の「青春ピカソ」を読み始めた

青春ピカソ

 これまで数回訪れている美術館を先日訪れ、その美術館でたまたまた買った「青春ピカソ (新潮文庫)」という岡本太郎の本をいま読んでいるのだが、これがすこぶる面白い。
 岡本太郎というと、1970年の万博、とくに「太陽の塔」を思い出す。また有名な「芸術は爆発だ」という言葉。最近では、渋谷駅に展示された「明日の神話」。
 しかしながら、俺は、岡本太郎に対する評価は、それほど高くはなかった。
 芸術家だから、自由人。少し、変人・奇人と思っていただけだ。
 大阪・万博もよくわからなかった。俺が中学校を卒業するときに万博があったから、余裕のある家庭は、大阪の万博に子どもを旅させた。俺の家はそんな余裕はなく、無理だった。なにが人類の「調和と進歩」か*1という気持ちもあった。
 大阪・万博でいえば、山田洋次監督の映画「故郷」で、倍賞千恵子(風見民子)と風見精一(井川比佐志)の家族が長崎から北海道に移動する際に、大阪・万博を訪れる場面がある。チンケ(花沢徳衛)に民子が無担保・無利息で借金をするのだが、大阪・万博で、偶然会ってしまう。民子が「ここは人類の『調和と進歩』の万博会場やろが あんたそれでも日本人ね」と、窮鼠猫を噛むかのように精一杯のタンカを切る場面が忘れられない。それにしても、倍賞千恵子といい花沢徳衛といい、名優だ。花沢徳衛の演技は、人間のいやらしさが出ている。いやらしいといっても、庶民のいやらしさ、助平根性で、権力のいやらしさからいえば、かわいいものなのだが。
 それにしても、岡本太郎の文章はすごい。パリソルボンヌ大学で、哲学・社会学民俗学を学んだという。
 いや、全くの俺の認識不足。
 俺が、岡本太郎の凄さを知らなかっただけで、浅学といえば、それまでだが、情けない。
 俺はいっぺんに岡本太郎ファンになってしまった。
 いや、ほんとに、まいった。
 

*1:「なにが人類の「調和と進歩」か」というのは、岡本太郎の気持ちでもあったという。建築家・丹下健三の屋根を突き破る太陽の塔の発想が岡本太郎の主張であるようだ。つまり、「調和」よりも「対立」「抗争」ということなのだろう。