「勤労統計調査マニュアル、点検前に一部削除 不正隠蔽か」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2019年1月22日05時07分)から。

 

 「毎月勤労統計」をめぐる問題で、厚生労働省が調査のマニュアルにあたる「事務取扱要領」から不正な手法を容認する記述を削除したのは、総務省の統計委員会がこの統計の調査手法の点検を決めた直後だったことが21日わかった。不正を隠すため、点検前に削られた疑いが濃くなった。

 この統計は賃金の動向などを毎月調べて発表するもので、政府の「基幹統計」の一つ。従業員500人以上の事業所はすべて調べるルールだが、厚労省は2004年から東京都分の約1400事業所のうち、約3分の1を勝手に抽出して調べていた。

 厚労省が03年に作成した事務取扱要領には、「規模500人以上事業所は東京に集中しており、全数調査にしなくても精度が確保できる」と、不正な手法を容認する記述があった。その後、2、3年おきに改定された要領でも同じ記述が引き継がれてきたが、15年1月調査分から利用される要領では削られた。

 総務省によると、その直前の14年10月、同省の統計委員会の部会が、毎月勤労統計の調査手法を審議することを決めていた。基幹統計は調査手法を変える際に統計委の点検を受けるが、この統計は1992年7月を最後に点検されておらず、適切に調査されているかどうか審議する必要があると判断されたという。

 審議は、不正容認の記述が削除された後の15年12月と16年2月に実施された。統計委が16年3月にまとめた報告書では、東京都分の抽出調査の不正についての指摘はなかった。審議には厚労省の担当部署の幹部職員が出席したが、東京都分の不適切な調査については説明しなかった。

 この問題をめぐっては、厚労省が組織的に不正を隠蔽(いんぺい)しようとしていた疑いが浮上している。誰がなぜ要領から記述を削ったかについて、厚労省幹部は「当時の担当者の動機に関わる部分で、現在調査を進めている」としている。