「香港政府「逃亡犯条例」改正案を撤回 なお先行き不透明」

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以下、朝日新聞デジタル版(2019年9月4日19時15分)から。

 香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が4日、市民らの大規模デモの引き金となった「逃亡犯条例」改正案を正式に撤回した。香港の混迷が深まるなか、市民の要求を一部受け入れることで事態の収束を図った。後ろ盾の中国政府の意向も踏まえた異例の政治的譲歩だが、デモ参加者らの要求は拡大しており、香港情勢の先行きはなお不透明だ。

 林鄭氏は4日夕、公邸に親中派の立法会(議会)議員らを緊急招集した後、午後6時(日本時間午後7時)からテレビ演説した。

 林鄭氏は市民に対し、「この2カ月余りに起こったことは香港人に衝撃と悲しみをもたらした」と語りかけ、改正案の撤回▽警察の監督組織に新たなメンバーを加える▽政府高官と市民の対話の枠組みの設置▽各界の知識人が参加する独立研究会の招集――を約束した。

 改正案の撤回表明は、市民やデモ隊の要求の一部を受け入れるものだ。中国政府が後ろ盾となった政策を市民が完全撤回に追い込んだことは、香港政府のみならず、中国政府の権威も揺さぶりそうだ。

 ただ、デモ参加者らの要求はすでに改正案の撤回にとどまらず、林鄭氏の辞任、警察の暴力追及や拘束された仲間の釈放、普通選挙の実施などに広がっており、撤回表明は遅きに失したとの見方もある。

 デモは本格化してから3カ月近くなり、警察との衝突が激しさを増し、観光や経済にも影響が広がっている。10月1日には中国の建国70周年が控えていることもあり、香港と中国は事態の収拾を急ぎたい考えだが、民主派や市民の反発が収まるかは微妙な情勢だ。(香港=平井良和、広州=益満雄一郎)

「逃亡犯条例」改正案 
 昨年、台湾で殺人の疑いをかけられた香港人の男が香港に逃げ帰り、台湾当局の訴追を免れたのがきっかけ。今年2月、男の身柄を台湾に引き渡すため香港政府が発表した改正案は、犯罪容疑者の身柄を中国本土に引き渡すことを可能にする内容だったため、乱用を恐れた市民らが強く反発した。抗議デモの高まりを受けて林鄭月娥行政長官は審議の継続を事実上断念し、7月、「改正案は死んだ」と発言したが、正式な撤回表明はしていなかった。