「「もし国が認めてもノー」 女川原発再稼働に反対の町長」

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以下、朝日新聞デジタル版(2019年9月22日12時28分)から。

 東北電力女川原発宮城県女川町、石巻市)から30キロ圏内にある美里町の相沢清一町長は、女川原発再稼働への反対の姿勢を貫いている。東日本大震災から11日で8年半。原子力規制委員会の審査会合が大詰めを迎える今、改めて反対の理由を聞いた。

 ――女川原発2号機の再稼働に向けた規制委の審査が大詰めです。

 「やはり再稼働はするべきでないと思う。福島の原子力事故から8年半経った今も大勢が避難している。女川原発の30キロ圏内の住民はもとより、宮城県民が原子力の安全性を本当に信頼して再稼働に踏み切るのか、心配がある。特に宮城は『農業県』なので事故はあってはならない。もし国が認めても『ノー』と言わざるを得ない。私たちには住民の命を守る責任があり、万が一の時にはその責任がとれないからだ」

 ――特に心配な点は。

 「今、いろんな災害が起こっている。安易に環境が整ったと再稼働に踏み切るのは短絡的だ。防潮堤がしっかりしていても、テロ対策はまだ十分でない。つい先日もトラブル(2号機の冷却ポンプ停止)があった。原子炉など主要設備は対策しているだろうが、今回のような付帯設備はどうか。地震でパイプなどが崩れる恐れは大いにあるのではないか。非常に不安だ」

 ――再稼働に反対するきっかけは。

 「福島の事故が起きた。それまで『原子力は安全だ。国策で絶対心配ない』と思っていた。女川も津波があと数十センチ高かったらアウトだった。これは大変なことだと、我々は突きつけられた。自治体として町民の命を守る立場で、安易に納得してはだめだろうと考えた」

 ――万が一の場合の避難計画にも懸念があります。美里町民は山形県に避難するそうですね。

 「重大災害では、全町での県外避難を考えている。最上地方の8市町村と協定や覚書を結び、町民2万5千人の避難を受け入れてもらう」

 ――山形まで行けば大丈夫ということでしょうか。

 「福島事故を教訓に、山を越えなければいけないと考えた。ただ、物資の備蓄があるかは分からない。8市町村が準備してくれると思うが、そこまで詰めていない。改めて課題も浮き彫りになった」

 ――県内では多くの自治体が仙台市などへの県内避難を計画していますが、交通渋滞や受け入れ態勢で心配があります。

 「避難計画を突き詰めると、実態には必ず問題が出ると思う。原発事故が起きる時は、地震や風水害などとの複合災害になり、県内だと避難先も被災しているケースがある。多くの避難計画に実効性をもたせるのは到底無理。だから再稼働はだめということになる」

 ――山形の8市町村とは独自で締結したのですか。

 「もともと鉄道や道路で結びつきが強く、懇意にしていた」

 ――独自の関係がない自治体は県の差配が頼りです。

 「本来は県がやるべきだと意見を言っているが、県は全然動かない。本気で女川を再稼働させていいと考えるのなら、覚悟をもって準備しないと県民に説明できないと思う」

 ――今後、どう対応しますか。

 「30キロ圏内の『UPZ』の首長同士で会合を開いている。これから本格的に再稼働について話し合いたい。全員の総意で反対を訴えるのは難しいが、最低限、周辺自治体としての考えを東北電力などに伝えたい」(聞き手・井上充昌)

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 あいざわ・せいいち 1952年生まれ。旧小牛田町出身。小牛田町議、美里町議、美里町議会議長を経て、2014年から町長。