朝日新聞デジタル版(2019/10/19 5:00 )から。
米国の有償軍事援助(FMS)による防衛装備品の調達状況について、国会からの要請を受けて検査をした会計検査院は18日、検査結果を国会に報告した。米国の最新鋭戦闘機F35Aの調達で、日本政府が国内企業を製造に参画させるなどしたため、1機当たりの調達価格が米国より40億円前後高くなっていた。
検査院によると、2017年度の日本のFMS調達は3882億円で、13年度の1117億円の3倍超。F35Aやオスプレイ、イージス・システム、早期警戒機E2Dなどを調達している。検査院は、調達が増えているF35Aについて、1機当たりの日本の調達価格を契約内容から算出し、米国が公表した自国向けの調達価格との比較を試みた。
日本が完成品を調達した12年度の価格は約1・2億ドル(当時の円換算で約97・7億円)で米国より約1270万ドル(同10・3億円)高かった。それが日本企業が製造に参画した13年度には約1・5億ドル(同129・6億円)に跳ね上がり、米国との差は4倍の5610万ドル(同46億円)に拡大。翌年度以降も米国より4千万ドルほど(14年度は同38・8億円、15年度は同47・6億円)高かった。
価格差について米国側は、仕様の違いや開発分担金のほか、日本企業がF35Aの最終組み立てや検査などに参画したことが主な原因、と検査院に説明した。日本企業は習熟度が低いため、工数が増えるなどして価格が上がるという。
防衛省によると、日本企業の参画は、戦闘機を生産・運用する技術の育成が目的で、F35A42機の取得とともに12年に閣議決定された。調達価格の上昇分について同省は「この目的に資する支出」としている。三菱重工業、IHI、三菱電機の3社が参画するのに必要な施設整備などに約1465億円も負担している。
政府は今年度、この参画をやめ、F35Aの完成品の調達に切り替えた。同省は昨年の概算要求までは、参画を維持し、6機を916億円(1機当たり約152億円)で調達しようとした。切り替えたことにより、6機で681億円(同113億円)と235億円(同39億円)減額された。変更の理由について、同省は「昨年105機の追加取得が決まり、安く早期に調達する必要が高まった。国内企業は計30機の製造に参画して習熟は進み、今後も整備を担う」と説明している。
検査院は今回の報告で、FMS調達で1・2%加算される契約管理費について、韓国などの諸外国が米国と協定を結んで受けている減免を日本が受けていないことなども指摘し、同省に対応を求めた。(上沢博之)