「安倍政権、際立つ国会軽視の姿勢 三つの「ない」が象徴」

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以下、朝日新聞デジタル版(2019/12/11 5:30)から。

臨時国会、三つの「ない」
 議論するための委員会を開かない、やりとりを深めるための資料を示さない、疑惑を向けられた政治家が国会に出てこない――。9日に閉幕した臨時国会は、三つの「ない」に象徴される安倍政権の立法府軽視の姿勢が、際立った。

 まずは「開かない」。

 野党は11月22日、「桜を見る会」をめぐり、安倍晋三首相に直接問いただすため、参院規則に基づき、首相出席での予算委員会開催を求めた。規則は委員の3分の1以上の求めで、委員会を開かなければならないと定める。その1週間前、首相は記者団に「国会から求められれば、説明責任を果たすのは当然」と語ったばかりだった。

 だが、首相入りの予算委を求める野党と、与党の協議は難航。金子原二郎参院予算委員長(自民)が12月3日、首相が出席しない形の開催を提案。野党は受け入れる姿勢を見せたが、与党は拒否した。参院自民幹部は菅義偉官房長官への配慮があったと明かす。「菅氏が『出る』と言ったら開いたかもしれない。菅氏も首相と同じで、桜ばかり国会で聞かれたくない」

 首相も菅氏も守りたい与党の対応で、衆参の予算委は開かれないままだった。立憲民主党蓮舫副代表は4日、「規則を堂々と破るものだ」と批判した。

 桜を見る会でも、招待者名簿を「廃棄した」と言ったり、個人情報を理由に答弁を控えたりする「示さない」例が相次いだが、政権は、最重要課題と位置づけた日米貿易協定でも資料公表を拒み続けた。

 政府は9月の日米首脳会談で、自動車に追加関税を課さないとトランプ米大統領に口頭で確認した、と説明。野党は会談の議事録提出を求めたが、与党は「外交記録を出せるわけがない」(自民幹部)と応じなかった。国民民主党玉木雄一郎代表は「納得できない。追加関税の可能性が残っている」と反発した。自動車関税が撤廃されない前提での経済効果試算の要求もあったが、示されなかった。

 「出てこない」のは10月下旬に連続辞任した菅原一秀経済産業相河井克行前法相。辞任時に「今後、説明責任を果たしたい」と強調し、首相も参院予算委で「自ら説明責任を果たしていくものと考えている」と話したが、2人は本会議を欠席し続け、公の場で説明していない。法相辞任の引き金は河井氏の妻、案里参院議員(自民)陣営の公職選挙法違反疑惑で、案里氏も欠席を続ける。

 国会閉幕の翌日、公務員や国会議員の冬のボーナスが発表された。在職期間が足りないなどの理由で菅原、河井両氏には閣僚分103万円は支払われなかったが、国会議員としてのボーナスは満額の324万円。7月に初当選した案里氏は194万円だった。(永田大、鬼原民幸、豊岡亮)

専門家「英首相に似ている」
 日本と同じ議院内閣制の英国の政治に詳しい高安健将・成蹊大教授(比較政治学)は「英国のジョンソン首相も公の場での説明を嫌がる。避ける、ずらす、答えない、という姿は安倍首相に似ている」と語る。

 ジョンソン首相がEU離脱協定案の国会承認を急いだ際、与党の保守党からも慎重論が出て立ち往生した経緯を踏まえ、「与党議員であっても、政府に説明責任を果たさせるため造反した」と解説。政府に同調するばかりの日本の与党も国会の役割と尊厳を守るために一定の厳しい姿勢を持つ必要があると指摘し、「国権の最高機関の一員として誇りを持つべきだ。国会議員には採決要員以外の存在意義がある」と述べた。